昨日の保護者向け講演会でのこと。
 不登校に関わる質問があった。
 「入試は受けられるのか?」
 「どうしたら学校に行くようになるか?」

 回答。
 前半の部分について。
 「不登校の生徒を対象とする特別な入試があるので、受けられないという心配はありません。詳しくは入学者選抜実施要綱をお読み下さい。中学校の先生の方がさまざまな事例をご存知だと思います」
 後半の部分について。
 「私はそちらの方面の専門家ではありませんのでよく分かりません。これも中学校の先生の方が詳しいし、親身に相談に乗ってくれるでしょう。

 何でも答えられてしまう人もいるが、普通は得手不得手というものがある。
 電気工事に来た人に、ついでに水道の方も見てくれと言っているようなものだ。
 せっかくの質問に申し訳ないが、分かりませんとしか答えようがない。
 
 講演後に、こんな質問も受けた。
 「子供に何か言ってやりたいが、聞くだけで、何のアドバイスもできない。どんなことを言ってやったらいいのか?」
 まあ、これもコミュニケーションや、子供の心理に関係しそうなので、得意分野じゃない。

 回答。
 「専門外なので経験の範囲でしかないのですが、『ただ聞いてくれる人』の存在って、とても大事だ思います」
 「先生に言ったら怒られそう。友達に言ったら笑われそう。でも、親なら何を言っても大丈夫そう」
 「そういう存在が身近にあったほうがいいんじゃないですか」
 「大人でもそうですけど、人に話しているうちに、自分の考えがはっきり分かってくるものです」
 「そう考えると、聞き役の存在って大事ですよね」
 「勉強のアドバイスは先生に任せて、『ふむふむ、それで?』と聞いてあげるだけで十分だと思いますよ」

 さて、これで合っているか。
 自信はないが、質問された方は、「じゃあ、これまでどおりでいいんですね。安心しました」と言っていたので、まあこれでいいことにするか。
 
 私は取材でよくインタビュー(interview)をする。
 interをviewするわけだが、一番心がけているのは、「話す気を失くさせない」ことだ。
 逆の立場で考えればすぐ分かるが、話す気がなくなるのは、つまらん質問を受けた時だ。
 そんなことも知らずに聞きに来たのかと腹が立つこともある。

 その反対に、「よくぞそこを尋ねてくれた」と、一番言いたかったことに話題を持って行ってくれると、気分良く話せる。
 聞き方って、ホント難しい。

 インタビューしながら、「この人の一番言いたいことは何なんだろう」と、古ぼけた頭をフル回転させて、ずっと考えている。
 質問がずれると、返答のタイミングが微妙に遅れるし、話が単調になる。
 質問がピタリはまると、即答してくるし、聞いていないことまで言ってくる。
 インタビューでは、この「聞いていないこと」というのも意外に重要なのだ。

 聞いていないのに言うということは、よほど言いたい事、聞いてもらいたい事、記事に書いてもらいたい事なのだ。
 これが引き出せたらインタビューは大成功。

 人の話を聞くって難しい。
 奥が深い。
 うまく行くと楽しい。

 聞いているだけでいいんですかなどと心配しなくていい。
 「言う」よりも「聞く」ほうが、大きな成果を得られる場合がある。