涼しいを通り越して寒い一日だった。雨も降っていたし。
 今月は「よみうり進学メディア11月号」の特集取材で4校ほど訪問する予定だ。
 特集テーマは「これが高校の授業だ」。

 どの学校を取り上げるかは発行元である読売エージェンシーさん次第。
 公私のバランスやら地域のバランスやらを考慮して決めていると思う。
 私立に関しては広告の出具合も影響しているかもしれないが、それは私には関係ない。
 言われたところに行く。

◆わが道行く秋草学園
 今日の訪問校は狭山市の秋草学園高校だ。
 女子校が次々に共学化する中、今も女子校のまま頑張っている数少ない学校。

 その昔、浦和麗明、大宮開成、星野、細田学園、山村学園、山村国際、みんな女子校だった。
 そして多くは学校名に「女子」が付いていた。
 今や埼玉県内で「女子」が付く私立は浦和明の星女子ただ一校。
 「女子」は付かないが女子校であるのが、大妻嵐山と淑徳与野、それに秋草学園の3校のみ。
 浦和明の星女子、大妻嵐山、淑徳与野は中高一貫だが秋草学園は高校単独。

 共学化ブームにも乗らず、中高一貫ブームにも乗らず、我が道を行く秋草学園。
 と言えば格好いいが、ここらで何か大胆な改革に打って出て欲しいところだ。

◆交通至便とは真逆の交通不便
 交通はかなり不便だ。
 最寄り駅というものがない。
 強いて言えば西武新宿線「新所沢駅」あたりだが、徒歩で1時間はかかる。
 これは以前、実地で試してみた結果だから確かだ。

 生徒が集まりにくい理由の一つは、このアクセスの悪さにあるかもしれない。
 が、それならうちも負けてないぞという学校はいくらでもある。
 浦和学院、開智未来、川越東、城西川越、城北埼玉、西武文理、東京農大三、本庄第一と、数え上げればきりがない。
 駅から徒歩が困難であっても、それぞれ特色を打ち出し、進学や部活で成果を上げている。

 だからアクセスの悪さは決定的なものとは言えない。
 秋草学園がアクセス問題を解決しようというなら、「新所沢駅」と「航空公園駅」のほぼ中間で線路沿いにある秋草学園短大の場所に移ればいいだろう。
 どちらの駅からも10分とかからない。
 これも実地で計測済みだ。

◆進学?部活? どっちなんだ
 大学進学と部活。
 両方で結果を残している学校がある。
 しかし、それが可能なのは一定の規模がある学校、つまり比較的大規模な学校である。

 秋草学園のような小規模校(今年度は260人募集)でこれをやろうすると、どちらも中途半端になる恐れがある。
 現在、関東・全国レベルにあるのは卓球、ダンス(創作ダンス系)、吹奏楽あたりかと思うが、強化指定クラブを絞り込み、ここはあまりウイングを広げないほうがいい。

 系列の短大が幼児教育・保育をメインにしている関係で、高校にも幼保コースがある。
 進学校イメージを打ち出して行く際には、これがややネックになる。
 しかし幼保は学園の原点でもあるし、これはそう簡単にはなくせない。
 そこで、部活組はできるだけここで吸収する。

 あとは進学強化だ。
 今春は筑波大、埼玉大といった国公立合格も出ているが、規模が規模であるから、ここでの大量合格は当面難しいだろう。
 二桁に乗れば十分だ。

 私大の方は、早慶上智といきたいところだが、まずはGMARCH完全制覇(今春は明治、立教、法政のみ)。
 それと女子大(毎年津田塾は出ている)。
 理系女子のイメージも打ち出したいところだが、いきなりは無理なのでまずは医療看護系。
 以上は完全保障という形で強くアピールする。
 可愛い制服などはオマケでいい。

 幸い生徒たちはとても素直だ。
 それは今日の授業見学でもよく分かった。
 ただ、いまいち自信なさげ。
 いろんなことに挑戦させながら、一歩一歩前進だ。
 そこは先生方もよく分かっている。

 校舎は古いが清潔に保たれている。
 そろそろ建て替えたいところだが、新校舎建てるなら現在地ではなく、短大の場所だろう(と、これは第三者の勝手な言い分)。

 大学進学率、特に女子の進学率が高まっている現在、それに応える学校であることを強く訴えないと生徒は集まらない。
 
 この学校に限ったことではないが、「訴求力」に課題を抱えた学校が多い。
 みんな、やるべきことはやっている。
 中身をよくよく見れば、すばらしい教育が行われていることが分かる。

 でも。
 来てもらえれば分かる、見てもらえば分かると言っているようではダメなのだ。
 その前に、行ってみよう、見てみようという気持ちになってもらわなければならない。
 そのためのメセージが届いていない。
 心に響いていない。
 最大の難関はここなのだ。

 うちはこういう学校です。
 それでもいいのだが、ここには「あなた」が欠けている。
 「ここって、もしかして私の(僕の)ための学校じゃない」。
 そう感じてもらえるようなメッセージになっているかどうか。
 そこのところ、もうちょっと考えてもらうと、募集は良い方向に進むだろう。