塾業界の話題を二つ。
 まずは「足立はばたき塾」の件。

 業界の皆さんにとって目新しい話題ではではないと思うが、SNSなどで話題になり、最近になって改めて注目を集めているようだ。

 少し前になるが、こんな記事もあった。

 学力トップ層向け「はばたき塾」が話題の足立区、ほかの教育施策もすごかった(10月27日 東洋経済education×ICT編集部)

 区が運営する無料塾で、成績は良いが家庭の経済的事情で民間塾に通えない中学3年生が対象。都立進学重点校など難関公立に毎年合格者を出している。
 2021年度は最後まで通塾した81人のうち、進学指導重点校に3人、進学指導特別推進校に8人、進学指導推進校に21人が合格したというから、なかなかのものである。
 実際の運営は民間に委託しており、いま現在はエデュケーショナルネットワーク(Z会グループ)が受託している。

 賛否があるのは当然だが、官と民、学校教育と民間教育の連携のあり方としては参考にはなるだろう。
 これまで、成績のあまり芳しくない生徒を対象に補習塾的なものを官民の協力で設置・運営する事例はあったと思うが、成績上位者を対象としたことで、結果としてエリート塾の色彩を帯びる可能性もあり、差別であるとか不公平であるといった批判や不満も出てきそうだ。

 それはさておき、民間教育側(塾側)としては、家庭の経済的事情からターゲット(見込み客)になりにくかった層を取り込むことに成功しているわけで、ここが注目点ではないか。

◆スクール21が佐鳴予備校と協力
 お次は埼玉県の話題。
 県内トップ塾のスクール21が、佐鳴予備校と協力して、大学受験生向け(高1・2年生)を対象とした特別講座を開講する。
 ハイスクール@will 最難関大への特別講座

 佐鳴予備校は愛知・静岡など東海地区を本拠とする塾・予備校だが、首都圏にも進出して来ている。神奈川県ではSTEP、臨海セミナー、湘南ゼミナールと並び歴史の古い塾である中萬学院は、今、佐鳴予備校の子会社となっている。
※なお、湘南ゼミナールは、森塾などを運営する株式会社スプリックスの子会社となっており、これについては約2年前、このブログで書いた。
 森塾による湘南ゼミナール子会社化 こういうのまだまだ続く(2020年11月19日)

 塾・予備校業界は大雑把に分ければ、中学受験メインの塾、高校受験メインの塾、大学受験メインの塾(と言うより予備校)となるわけだが、少子化が急加速している今、これらを縦一本の線で繋ぎたいとは誰もが考えるところだろう。
 また、横の広がり、すなわち面で言えば、都道府県単位の地方展開から、ブロック展開、さらには全国展開と考えるのも昔からだ。
 こうした縦と横の展開を考える上で欠かせないのが業務や資本提携、さらには合併、子会社化などである。

 今回のスクール21と佐鳴予備校の協力関係が、今後どのように発展するのかは私には分からない。ただ、高校受験メインのスクール21にとっては大学受験への足掛かりにはなりそうだし、佐鳴予備校にとっては首都圏進出のさらなる強化に繋がる可能性はありそうだ。