受験生は最後の一日まで伸びるというが、本当だろうか。
 結論を先に言えば、嘘にならない程度に本当だ。
 って、これじゃ意味分からんし、そもそも日本語になっていない。

 受験生は毎日少しずつ知識を積み上げて行く。
 しかし、勉強量に応じて(比例して)模試などで得点できるかというと、特に最初のうちはそうはならない。
 なぜなら、テスト問題というのは基本、複数の知識の組み合わせによって答えが導かれるように作られているからだ。
 必要な知識のうち、たった一つでも欠ければ正しい答えには至らない。
 ある問題を解くのに、4つの細かい知識が必要だとしたら、3つ目を覚えた段階ではまだ答えが出ず、最後4つ目の知識を覚えた段階で初めて答えが出せるのだ。
 だから、勉強の初期段階では、やっている割には得点や偏差値が伸びない。

 グラスに一滴ずつ水を垂らす場面を考えてみよう。
 最初のうちは溜まっているかどうかさえ分かりにくい。
 だが、続けていると、少しずつ水位が高まってくることが分かる。
 それにしても、水が外にあふれ出るには、まだ相当時間がかかる。
 そこをグッと我慢して根気よく垂らし続ける。
 すると、ようやく水位はグラスの縁まで上がって来る。
 そして、最後の一滴だ。
 この瞬間、ついに水はグラスの外に流れ出す。
 つまり、これが問題を完璧に解けるようになった瞬間だ。

 さあ、ここまで来ればしめたものだ。
 ここから先は、一滴垂らすごとに水が外に流れ出る。
 やればやるほど、結果が出る状態だ。
 
 受験生は最後の一日まで伸びるというのは、このような考え方に基づいているのではないか。

 今まで一所懸命やってきたが、思うように得点や偏差値が伸びなかった。
 それは最後の一滴が足りなかったかもしれない。
 たった一つの知識が欠けていたからかもしれない。
 だとすれば、絶望せずに最後の一滴、あと一つの知識を注ぎ込んでみようではないか。
 そうすれば、今まで「×」だった問題が「△」や「〇」になるかもしれない。

 くどいが別の言い方をしてみよう。
 
 たくさんの鍵がかかった門がある。
 この門をこじあけるには5つの鍵が必要だとする。
 今、自分は4つを手にしている。
 さあ、どうする。
 あきらめて引き返す?

 まさか。
 ここまで来たら、必死になって残りあと1つの鍵を手に入れようとするはずだ。

 残り時間は少ない。
 だから、1つ2つしか鍵を持っていないとしたら、今から残り3つ4つを手に入れることはほぼ不可能だ。
 しかし、4つは持っているというものなら、いくつかあるだろう。
 それを洗い出し、そこにすべてを賭けよう。

 受験勉強では「捨てる」という発想は好ましくないとされている。
 その通りだ。
 だがここで勧めているているのは「捨てる」のではなく「拾う」ことである。
 せっかく4つ持っているのに、これでは門は開かないからと「捨てる」なんて馬鹿な真似をしてはいけない。
 目の前に落ちている最後の1つを「拾う」のだ。

 まあ、あまり根を詰めて体調を崩しては元も子もないので、そこだけは注意してくれ。