ポジショントークという言葉をよく聞く。
 日本語に訳すと・・・
 そう思っても和製英語と呼ばれる日本語であるから訳しようがない。

 個人の主義主張に基づくものではなく、組織や社会において自分が期待されている役割に基づいてする発言。
 大方こんな意味になるだろう。
 よくあることである。

◆誰にでも守るべきポジションはある
 個人としてはそうは思わないが立場上そう言わなければならないという経験は誰にでもある。
 先生方も個人的はそうは思わないが、先生という立場上そう言わなければならない場面は多いだろう。
 中には生徒を前にして「個人的にはそうは思わないけど」とエクスキューズを加えてしまう人もいるが、これは反則プレーだ。
 徹頭徹尾、先生という役割を貫くのが大人の態度、社会人の態度と言うべきだろう。

 私のような個人事業者は「組織=個人(私)」なのであるから、そういう点でのポジショントークは必要ない。
 ただし、市場でのポジションというものがある。
 基本学校あっての商売であるから、直接の取引があろうがなかろうが、学校から嫌われるような発言はしない。
 学校や先生方から贔屓にしてもらえなければ食って行けない。
 だから、いつも学校に忖度しっぱなし。

◆それぞれの役を演じる人たち 
 割と最近のことだが、オンラインメディアNewsPicksが公開した「チャットGPTは教育の敵か、味方か?」と題した討論番組で、佐藤ママと呼ばれるタレントが「12歳までは完全隔離にしてほしい。触っちゃいけない」などと発言し、ちょっとした話題になった。

 佐藤ママという人は子供4人を全員東大理Ⅲに入れたことが話題になり、タレント活動や講演活動をされている方だ。
 このポジションはなかなか強力だ。
 一人や二人なら他にもいるかもしれないが4人はご立派。
 これを上回るには4人全員ハーバードくらい実現しないと無理だ。
 (そう言えば尾木ママはどうした。ママの座は佐藤に移ったか)

 で、この発言は、佐藤ママと言えども、それ自体ではさほど注目されないだろう。
 ところがそこにホリエモン(堀江貴文)氏が食いついた。
 「こいつバカでしょ笑」とTwitterでつぶやいた。
 さらに脳科学者の茂木健一郎氏が「全面的にホリエモンに賛成」とツイート。
 「だったら永遠に江戸時代の寺子屋教育でもやっていればいい」とブログで批判。
 さらにさらに、ひろゆき(西村博之)氏も参戦し、「成功した教育ママは、単に優秀な遺伝子の子供が産まれただけなのに、教育法に意味があったと思い込んでるだけの可能性あるんですよね」と発言。

 まあ、これだけ役者が揃い、それぞれが期待通りの発言をしてくれれば話題にはなるよな、という話だ。
 佐藤ママの発言も演出側の意図に沿ったものだろう。
 「佐藤さん、ここはちょっと過激な発言お願いしますね」
 と、言われたかどうか分からないが、言われなくても意図を察知して炎上ネタをぶっこむのもプロの役割だ。

 参戦してきた人たちも、「○○なら、そう言うような」という発言をして役割を全うしている。
 視聴率やPVを高めるために、以心伝心みんなで協力し合う。
 ここには個人の思想や主義主張などない。
 あるのはポジショントークだけ。
 そして、我々はこれを娯楽として消費する。