ある仕事で中高生の手書きの文章を大量に読んでいる。
 小論文とか作文とかではない。
 それよりはだいぶ少ない、いわば短文である。

 自分自身もそうだが、最近はスマホやタブレット、パソコンで用を済ますことが多く、手書きの機会はかなり減ったのではないか。
 学校でも昔は板書が必須だった。
 今はプロジェクターや電子黒板を使うことが多くなったから、黒板やホワイトボードに文字を書くことなく授業が進められる。

◆極小文字を書く子
 で、話は文字の大きさについてである。

 手書きであるから、乱暴な文字もあるし、書いた本人しか読めんだろうというクセ字もある。
 しかし、これらは前後の文脈から推しはかったりもできる。

 一番困るのは、超極小文字。
 あと、超薄いのも困りもんだが、とにかくこの超極小文字を書く子が数十人に一人の割合で出現するのだ。
 学校で言えばクラスに1人とかそんな割合だ。

 文脈から判断しようにも、そもそも物理的に見えないのだ。
 仕方ないから拡大鏡を持ち出してくる。

 こういう極小文字を読むのは、私のような老人でなくてもかなりのストレスになる。
 そういう読み手の気持ちを考えないのか。
 まあ、考えないんだろうね。
 考えれば、もうちょっとマシな大きさになるはずだ。

 また、こういう子は、先生が黒板に小さな字で書いても「見えません」とか「読めません」とか不満を言わないのだろうか。
 もしや草原の民のように視力が5.0とか10.0とかあるんだろうか。

◆文法的に誤りはないんだが
 この、大きなスペースに、それと見合わない極小文字を書く子には一つの特徴がある。

 文法的には間違いはない。
 表現もおかしなところはない。
 
 もちろん私の経験の範囲内ということであって、学問的に検証したわけではない。
 その意味では単なる印象だが、でかい字で乱暴に書きなぐる子に比べたら、はるかにいいこと書いてる。

 うーん、もったいないな。

 これが入試だったら、先生方は顕微鏡を使ってでも読んでくれるだろう。
 それに、もともといろんなタイプの文字に慣れている人たちなわけだし。

 しかし会社ではそうは行かない。

◆面接前にアウト
 かつて会社員時代に採用に関係したことがある。
 朝日とか読売とか大新聞に求人広告を出すと翌日には何百という履歴書が送られてくる。

 全員と面接することは不可能だから、まずは書類選考となる。
 (今ならネットが普通だが、これは平成前期の話だ)

 どんな封筒で送ってくるか。
 宛名書きはルールに則っているか。
 まずはそこからふるい落としが始まるが、そこはスルーして中身の話に移ろう。

 出身校や仕事歴、実績等見て、面接に呼ぶかどうか決めるわけだが、その前に文字だ。
 綺麗な文字は読みやすくていいが、じゃあ面接に呼ぼうかとはならない。
 上手い下手はそれぞれであって、普通に読めればいい。

 文字の美しさよりも、枠と文字の大きさとのバランスを見る。
 スペースに対して、極端に文字の大きい人、つまりことごとくはみ出している人。
 それと、スペースに似合わない極小文字の人。
 こういう人には会わない。

 もしかしたら、ものすごい才能の持ち主で、会社に多大な利益をもたらしてくれる人なのかもしれない。
 だが、時間と予算が限られた中での選考では、真っ先に排除しておいたほうが無難だ。

◆得をすることは一つもない
 前述したように、極小文字を書く人は能力が低いというわけではない。
 慎重派なのかもしれない。
 几帳面なのかもしれない。
 物事をゆっくり深く考えるタイプなのかもしれない。

 だから人間的に否定してはいけない。
 字の大きさがそのまま人間の器ということでもあるまい。

 ただ、経験の範囲で言わせてもらうなら、この先の人生で得をすることは一つもない。
 先生方の目の前にそういう子がいたら、「もうちょっとバランスを考えた方がいいかもね」と、アドバイスしてあげてほしい。