営業という言葉、あるいはその実態は、私のような商売人にとって身近なものである。
 というより、これなくして日々の生活は立ち行かない。
 仕事が向こうからやって来ることなどなく、自ら商品・サービスを開発し、それを売り込むという行動をしなければ、明日という日はやって来ないのである。

 そんな私の経験など、業界・職種の異なる学校の先生方にはほとんど役立たずなのであるが、それを承知で今回は「対面(営業)」の重要性について語ってみたい。

 対面営業とは、顧客と直接会って営業する手法である。
 直接会って話すことで深いコミュニケーションがとれる。
 ただ、会う約束(アポイント)を取り付けるまでが難しい。
 こちらには会いたい理由があるのだが、向こうにはないからだ。
 
 対面営業に対して、非対面営業がある。
 顧客と直接会うことなく営業する手法である。
 電話、メール、Web会議システムを利用したオンライン商談などが該当する。
 移動の必要がないため、交通費や時間の節約になる。

 次に、少し言葉を変えて、対面販売、非対面販売について考えてみよう。
 原理は同じである。
 顧客と直接会って販売するのが対面販売、直接会うことなく販売するのが非対面販売。
 Amazonや楽天などのEC(Electronic Commerce=電子商取引)は非対面販売で、実店舗を構えてそこで売るのが対面販売ということになるだろう。

 さて、ここから話は飛躍する。
 生徒募集に関わる活動をやや強引に対面営業(販売)と非対面営業(販売)に分類してみる。

 ▼対面営業(販売)に該当するもの
 学校説明会・個別相談会等
 進学イベント参加
 中学校訪問
 塾訪問(塾説明会)

 ▼非対面営業(販売)に該当するもの
 WEBによる説明会(個別相談)
 動画配信
 SNSによる情報発信、コミュニケーション

 かつては対面以外にほとんど方法はなかった。
 だが、ネット環境が整い、非対面が可能になった。
 おそらくコロナ禍がこれを加速させた。

 では、対面は非対面に取って代わられるだろうか。
 別の言い方をすれば、対面は非対面に置き換えられるだろうか。

 私の答えは否、である。
 対面にこだわるのは古いと言われるかもしれないが、これは新旧の問題ではない。
 
 学校や学校教育を商品やサービスととらえる考え方には抵抗のある方もおられるだろうが、ここは我慢して学校を商品、教育をサービスと考えていただこう。
 この商品とサービスは一体となって販売される。
 お客の側からは、一体のものとして購入する。

 授業料は無償化の方向に進んでいるが、この商品・サービスはなかなかの高額である。
 また、返品もきかなければ、基本買い替えもできない。
 つまり一生一度の、間違いの許されない買い物である。

 通常、人々は、この手の買い物は非対面ではしないものである。
 住宅や車や高額な貴金属をネットで購入したという人を私は知らない。
 中にはそういう人もいるのかもしれないが、私の住んでいる世界にはいない。
 営業マンから説明を聞き、実物を見て、納得したのちに購入を決めるのである。

 将来、教育というものがきわめて安価になり、返品OK、買い替え可能となれば、非対面でも構わないだろうが、当分そうなりそうな気配はない。
 だとすれば、生徒募集というものは、これから先も対面営業(販売)が主流であり続けるだろう。
 もちろん、非対面により対面を補強・補完するという考え方は必要だ。
 今まで、他に方法がないために、やむを得ず対面に頼っていたこともあるだろう。
 それらはどんどん非対面に置き換えて行けばいいだろう。

 ただし、繰り返すが、商品・サービス特性から考えて、非対面が主流になることはない。
 時間とコストはかかるが、成功のためには対面の強化を図るしかないだろう。