話題としてはやや古くなってしまったが、大阪府の公立高校で大量の定員割れ校が出てしまったニュースについて簡単に触れておこう。

 マスコミは「激震」などという言葉を使って世間の耳目を集めようとしている。

「これほどとは…」公立高で70校の定員割れ 激震の大阪府教育庁、私学無償化策の波紋(3月30日 産経新聞) 

 新聞見出しある「まさかこれほど」は、府教育庁担当者の言葉である。
 「私立人気の高まりは予想された」が、「まさかこれほど」とは思わなかったというわけだ。
 これはつまり、府として、私立人気が高まるような施策を実施した自覚があることを示している。
 公立人気が高まるような施策を実施したつもりだったが、意図に反して「まさか」の結果が起きたわけではない。

 授業料負担が私立を選ぶ際の大きな障壁になっているのは明らかで、これを取り除けば私立が選びやすくなるのは当然である。
 その結果、公立の定員確保が難しくなる。

 大阪府では連続して定員割れを起こし改善の見込みがないと判断された高校は統廃合対象とする方針が示されている。
 今回のように定員割れ校が続出すれば、今後の統廃合計画が進めやすくなるだろう。

 各自治体の教育予算を見ると、その大部分が人件費である。
 学校が減れば、教職員数(公務員数)を削減でき、その分人件費を抑制することができる。むろん学校数が減れば維持管理費も大幅削減できる。

 そう考えると、今回の授業料無償化政策は、学校の統廃合による教育予算(人件費と管理維持費)削減を狙ったものだという見方もできる。

 所得制限無しの授業料完全無償化は、自治体が税金を原資に公私立の授業料を負担するのであるから、住民(納税者)の負担は増えそうだが、必ずしもそうとは言えない。
 仮に私立に補助金を出したとしても、多くの公立学校を維持するよりは割安となるだろう。

 公立学校数を現状通りとしたしたまま所得制限無しの授業料完全無償化を実現するのは困難だ。
 埼玉県で所得制限無しの授業料完全無償化を進める場合も、統廃合とセットで進めて行くことになるだろう。

 なお、大阪府の制度は、私立高校の年間授業料を最大63万円までを公費(国と府)で賄い、超過分を学校が負担するものであるため、私立高校側からも反対の声が大きい。