説明会が実際の募集につながらない。
 まあ、よくあることだ。

 回数を増やすのは接触チャンスを増やすことになるから、できればそうしたほうがいい。
 だが、それだけで志願者が増えるほど甘くない。

 そこで今日は、多少なりともヒントになりそうな話をしてみようと思う。

◆締めの言葉、間違っていないか
 説明会は学校アピールの場である。
 それはいい。
 時々、さんざん説明した後、「よく考えて学校を決めてください」などと言っている学校もあるが、最後の締め言葉は「ぜひ、うちの学校を受けてください」に決まっている。
 話(プレゼン)を聞いて、だんだんその気になってきた相手に対して、よく考えろでは、まるで突き放しているようではないか。
 だったら、わざわざ呼ぶな。
 話、聞かせるな。

◆凄ければ凄いほど不安になる心理
 学校説明会は、学校側が言いたいことを言う。
 そのための会だ。
 しかし、ただ一方的に言うのではなく、想像力を働かせて、相手が聞きたいであろう話をする。
 と、ここまでは誰もがやっていることだ。

 時折見かけるのが、ただ数字を列挙するだけの説明だ。
 「今春は過去最高の実績を上げました」
 それは学校として誇りだろう、嬉しいだろう。
 だから、ついつい声が大きくなってしまうのだが、聞き手の側はどうだろう。

 中には、数字に無条件に飛びつく人もいるだろうが、それにビビッてしまう子だっているのだ。
 「そんなに凄い学校に入って、自分はやって行けるだろう、ついていけるだろうか」
 そんな風に受けとる子もいるかもしれない。

 いや、そういう子は来てもらわなくていいのだというなら、それでもいいが、そうじゃないなら、心配ないのだという話を付け加えなければなるまい。

◆希望と安心を与えているか
 説明会におけるプレゼンは、学校が実績を誇る場でもあるが、受験生に希望を与える場でもあり、安心を与える場でもある。
 仕事柄、多くの学校の説明会を聞きに行くが、ここが不十分な学校が意外に多い。
 ちなみに、私が塾対象説明会よりも受験生・保護者向け説明会に好んで出かけるのは、ここに興味があるからだ。
 
 「うちの学校では平日午後8時まで自習室を開放しています。土日も一日中開いています」
 こんな話を聞いたら、私なら「この学校に入ったら、そんなに勉強しなきゃいけないのか」と恐れをなしてしまうだろう。
 学校側が凄いだろうと思って放つ一言が相手をビビらせてしまうこともあるのだ。

 何を言うか、どう言うかはそれぞれお考えいただきたいが、「希望と安心」がキーワードであることを心にとめてもらいたものである。

◆個別に、親身に聞く
 一歩踏み出せない大きな理由の一つは不安である。
 勉強についていけるのか。
 友達とうまくやっていけるのか。
 先生はおそろしいのか。
 体力が続くのか。

 未知の世界は不安なことばかり。

 不安の在りかは人それぞれだから、できれば一人一人聞いたほうがいい。
 個別相談はそのためにある。

 公立の先生方は、私立は成績相談のために個別相談が必須になっているのだろうと思っているようだが、それは違う。
 それも大きな理由だが、聞きたいことに答えてあげる場としての役割が大きい。
 そりゃあ、親身になって聞いてくれた方に心がなびくだろう。

 人手を要する取り組みであるから、実施の困難さは分かる。
 が、説明会でこちらの言いたいことを言ったら、個別相談では向こうの聞きたいことに答えてあげるというようにすれば、受験生・保護者としても決心しやすいだろう。

 ということで、今日は説明会のありかたに一工夫してみればの話であった。