第1回進路希望調査がらみの発信が続いている。
 この調査は人気投票の側面もある。
 それは調査実施時期による。
 
 夏休み明けであるから、まだ受験勉強を本格化していない生徒も多いだろう。
 学校説明会などもそれほど多くは参加していないだろう。
 模擬試験も1回か2回しか受けておらず自身の学力を正しく把握できていないだろう。
 だから、「行けるか行けないか」はそれほど深く考えず、ことによったら「行きたいか行きたくないか」さえ突き詰めて考えず、ただ先生から「いついつまでに出しなさい」と言われたから、とりあえず頭に浮かぶ学校を書いたという生徒も少なくないだろう。その意味で人気投票。

 しかしながら、広告や広報に多少なりとも関心を持つ者からすれば、頭に浮かぶ、すなわち第一想起されることはきわめて重要なのである。
 
 受験生にとっては「最終倍率がどうなるかが問題なのだよ」となるだろうし、高校側もそうだろう。
 もちろん私個人もそこが最大の関心事である。
 が、それと同じくらい、人気投票的な要素が含まれる第1回調査に関心を持っている。

◆人気低下が止まらない川越女子高校
 下のグラフは川越女子高校の第1回調査倍率の推移を示したものである。

 今回の1.19倍という数字を見て、「ちょっと低いな」と思われた方は多いだろう。
 私もそうだ。
 私の脳内ある数字は1.4とか1.5であるから大きくかけ離れているのだ。
 そこで今回含む10年間の推移を調べてみた。
 今回を除く過去9年間の平均はやはり私の脳内にある数字に近い1.47倍であった。

 このグラフ、どこからどう見ても完全な右肩下がりであろう。
 希望した中学生は低倍率に安堵しているかもしれないが、一方の当事者である川越女子高校関係者の皆さんは危機感を募らせているだろう。
 最終的には1.3倍前後まで上がる可能性が高いが、そういう問題ではない、と私は思う。

 これは川越女子高校が抱える固有の問題に起因するのか。
 それとも別学校が抱える共通の問題に起因するのか。
 はたまた地域全体が抱える問題によるものなのか。

 直感的には、これは女子校の危機なのではないか。
 ちなみに男子校・川越高校で同じグラフを作ってみた。

 3年に1回ぐらいの割合で1.5倍を下回ることはあるが、明らかな右肩下がりは確認できない。
 過去9年間の平均が1.52倍で、今回がそれと同じ1.52倍。

 同じ地域にあり、同じように古い歴史を持つ両校の間にこのようなに明確な差が見られるのは、男子校と女子校の違いということ以外考えられない。

◆別学校は女子校から崩れて行くのか
 川越女子高校は個人的に好きな学校だ。
 いわば「川女推し」。
 授業も見に行っているし文化祭(紫苑祭)は何度も訪れている。

 ●川越市駅から徒歩5分
  裏門作れば秒で校内
 ●SSH指定校
  理系に強い
 ●東大2人
  国公立112 早慶上智94 MARCH267と申し分なし。1学年360人規模でこれだけの数字叩き出せる学校が公私あわせてどれほどあるか
 ●部活豊富
  文化部多彩で音楽系部活だけで吹奏楽・音楽・マンドリン・筝曲など6つ。茶道部は表千家と裏千家の2つ等々

 まあ、欠点を見つけるのが大変というくらいなのだが、にもかかわらず、この右肩下がり、この低倍率。
 となれば、やはり別学校(特に女子校)という点が敬遠材料であると考えざるを得ない。

 ついでと言っては何だが、他の女子校も見ておこう。

 ■浦和一女
 ほぼ横ばいだが、昨年の1.21倍も今回の1.25倍も全県普通科平均を下回っている。

 ■熊谷女子
 元々高倍率とは言えないが、ここ3年間は第1回調査時点では定員割れしている。川越女子同様に右肩下がり。

 ■春日部女子
 令和3年度から普通科240人定員で4年度は280人に戻ったが5年度以降は240人という点も考慮しなければならないが1倍前後で安定はしている。

 ■松山女子
 ここ3年間は第1回調査時点では定員割れしている。320人定員では苦しくなった。 

 ■久喜
 今回含めここ10年間、第1回調査で1倍を超えたことがない。
 
  
 ■鴻巣女子
 家庭系専門学科併設で普通科は80人定員と小規模。それでも1倍を超えられない。グラフの縦軸を0.5から2.0としたので令和5年度の0.46倍が消えてしまった。

 ざっとこのような状況である。
 現状、第1回調査時点の倍率が低い、あるいは下がってきたと言っても、最終的にはほぼ定員を満たす形になるので教育活動への支障はない。
 しかし、だからこそ今のうちに打てる手を打っておくべきなのである。

 昨年来共学化問題が世間の注目を集めている。そうした世の中の動きが受験生の学校選びにも影響を及ぼしているのかもしれない。ただ、女子校人気の低下はそれよりずっと前から始まっていると思わざるを得ないのである。