実際に子供たち(児童生徒)に授業をする機会のない私だが、気になる(興味深い)新聞記事である。

 国期待のデジタル教科書 先進国では進むアナログ回帰 子供の学力低下への懸念背景に(産経新聞 9月21日)

 文部科学省は、デジタル教科書を紙と同様に正式な教科書と位置付ける方向に舵を切った。だが一方、デジタル化が進行する中で子供たちの学力低下が懸念されている。また、デジタル先進国と言われる北欧諸国などでは紙に回帰する動きもある。さて、これからどうなるのか。
 という内容の記事だ。

 スピードや効率性が重視される企業社会ではデジタル化が合理的な選択肢となっており、「紙に手書き」へ戻ろうという話は聞いたことがない。デジタル化は加速するばかりだ。
 学校でも事務的作業に限ればデジタル化一択といったところだろう。

 だが、学校では、授業では、どうやら「人間の認知特性」や「発達段階」に根差した配慮が求められるようだ。
 がんがんデジタル化してきたが、どうやらオールマイティではないな、ということが分かってきた。
 ほれ見ろ。だからデジタルはダメだって言っただろう。そう言いたい年寄りもいそうだが、やってみて分かったというところが大事なのだ。
 「失敗ではない。うまく行かない1万通りの方法を発見したのだ」(トーマス・エジソン)

 紙がなぜ優れているか。
 これについては、触覚刺激が脳に好影響を及ぼすという研究がある。ページをめくる、手書きで書き込むといった行為が脳の情報処理を助け、記憶を強化するというのだ。
 長文読解や深い理解を必要とする学習では、紙の方が効果的だという研究もある。スウェーデンでは読解力低下への対策として紙教材を再導入したという。

 今のところ、記憶定着や読解力には紙、視覚的理解や個別学習にはデジタルといったところのようだが、まだ分からない。
 
 私が学校に期待したいのは組織としての研究だ。
 個々の先生に任せるのではなく、教科として、あるいは学校として、組織的に研究、検討する。

 塾の先生については、なかなか組織的にというのは難しそうだ。
 だが、「記憶定着や読解力には紙」という研究結果が正しいとすれば、デジタル化には慎重であったほうがいいかもしれない。