先日、ある会合で塾業界の現状に詳しい方と話す機会があった。
 (たまたま席が隣りになったので)
 その方によると、高校受験塾(主に中学生が対象)では、「集団指導の進学塾」は経営的にかなり厳しいところも出てきているが、「個別指導の補習塾」はそれに比べればまだ順調なところが多いという。

 少子化は今に始まったことではないから、それはいったん脇に置くとしよう。

 では、なぜ「集団指導の進学塾」が苦戦し、「個別指導の補習塾」が善戦しているのか。
 まずコスト面だが(つまり人件費だが)、集団指導の方が、スキルの高い指導者を必要とするので人件費が高騰しがちである。それに対し個別指導は、人件費(時間給)の低い大学生でも対応できるという点で優位に立つ。もっとも、最近は学生アルバイトの採用自体が難しくなっているらしい。

 次に、進学塾に行く動機が(行くべき理由)がなくなってきている。
 一部では激しい競争が起きているが、全体として見れば、低倍率の学校や、定員割れの学校が増えている。特に公立においては顕著だ。
 だから、そんなに無理して勉強しなくても高校に入れる。
 「3年生の後半にちょこっと行けばいいじゃん」、となる。

 「個別指導の補習塾」がまあまあ善戦しているのは、自分のペースやレベルに合わせて教えてもらえるから、ということらしい。
 受験そのものはそれほど必死になる必要はないが、この先、高校も大学もあるわけだし、一応中学校の教科書レベルは分かっておいたほうがいいよね、というニーズはそれなりにあって、それが「個別指導の補習塾」を支えている。

 というような見方があることを教えてもらった。
 食事をしながらの雑談というシチュエーションなので、深い分析ではないが、なるほどそうかもしれないと納得できる話ではあった。

◆業界は残るかもしれないが
 塾という仕事、塾という業界はなくなるのか。
 たぶん、なくなりはしないだろう。
 つまり塾業界は残る。

 だが、自塾が生き残るかどうかは、また別の話だ。
 塾業界はシュリンクして(今よりも小さくなって)残るだろう。
 だが小さくなった分、その中で生き残ることができるプレーヤーの数は減るはずだ。

 塾の先生方と話していると、しばしば「塾はなくならない」という言葉が聞かれる。
 はて?
 この場合の塾とは、塾業界のことを言っているのか、自身の塾のことを言っているのか。
 塾業界のことであれば、そうかもしれない。いや、そうだろう。
 だが、自身の塾のことだとしたら、それは分からんぞ。

 自身の塾はなくならない、と自信を持って言えるためには、5年後、10年後を見据えた改革をすでに始めていなければならない。
 そのあたり大丈夫なのかと他人事ながら心配している。

 成長期や拡大期であれば、大きなところは大きいなりに、小さなところは小さいなりに成功を収めることができた。失敗者ゼロの時代。
 しかし、安定期を過ぎ、衰退期に向かって行くと、成功者と失敗者に二分される。小さく成功ということができなくなる。これは、過去さまざまな業界で起こってきたことだ。
 さあ、次世代に向けた改革を始めよう。改善とかじゃなく改革。破壊(ぶっこわす)を伴う改革を。

 といった話をしているうちにデザートが出てコーヒーが出て会はお開きとなった。