さいたま市内公立中学校で入試講演を行った。
 主なテーマは「高校授業料無償化」と「令和9年度公立入試改革」。
 今年はこの後も何回かこのテーマでの講演会が予定されている。

◆入試講演まとめ
 公立入試改革では、調査書様式が変更になり、部活動や資格取得について記入する欄がなくなったことを確認した。
 しかし、部活動や資格取得が完全に無視されるわけではなく、新たに導入される「自己評価資料」に自ら書くことができる。
 この「自己評価資料」はそれ自体が点数化されることはないが、全校必須となった「面接」の際の参考資料とされる。
 と、ここまでで変更点の確認と説明は終わり。

 さて、ここで。「面接は苦手」とか「自己評価資料なんてどう書けばいいか」と不安を持つ人も多いと思うが、大丈夫。選抜資料全体に占める「面接」の割合は実はそれほど高くはない。
 むしろ注目すべきは、9教科の評定のみとなった調査書の重みがこれまで以上に増していることだ。
 と、そのことをグラフを用いて明らかにした上で、今度の入試で有利になるのは学校の授業にしっかり取り組んだ人だと結論づける。
 ただ、1点が明暗を分けるのが入試であるから、割合が低いとは言え、面接を軽視するのは得策ではない。今すぐである必要はないが、必ず準備をして臨もう。

 ここからは最近のニュースに関連して。

◆中学校部活の地域移行(地域展開)とは何だったのだ 
「中学校の部活動は「学校教育の一環」との位置付けを維持…学習指導要領の改定に向け有識者会議、働き方改革推進も明記」(3月4日 読売新聞オンライン)

 一瞬我が目を疑った。
 スポーツ庁と文化庁の有識者会議が、2031年度からの次期学習指導要領においても、中学校の部活動を「学校教育の一環」と位置づける方針を維持するというのだ。

 は?
 じゃあ、これまで積み上げてきた「部活動改革」の議論とは、一体何だったの?
 埼玉の公立入試改革だって、もとをただせば部活動の地域移行(地域展開)から派生したんじゃないの。一体どうなってるんだ。

 これまでの部活動は、教科とは一線を画す教科外の活動であって、生徒の自主性を前提とした、いわば「放課後の余暇」という建前があった。だからこそ、教員の関与も「任意」であり、制度的な義務ではないという理屈が(非常に苦しいながらも)成立していた。そしてこの曖昧さは、一種の「逃げ道」でもあったわけだ。だが、これが学習指導要領に明記され、正式な「教育活動」として固定化されればどうなるか。教員の指導は「善意のボランティア」から「逃げ場のない職務」へと昇格(いや、そうじゃない。陥落か)する。そして、実質的な無償労働を国家が制度として公認し、長時間労働の再生産を確定するに等しい。

◆霞が関お得意の縄張り争いか
 なぜ、時代に逆行するかのような決定がなされるのか。
 その背景には、霞が関における「縄張り争い」という、極めて世俗的な力学が見え隠れする。

 経済産業省は「未来のブカツ」を掲げ、民間の活力を用いた部活動のプラットフォーム化を狙っている。
 これに対し、スポーツ庁や文化庁は、自らの管轄領域が侵食されることに抵抗しているという構図だ。「教育的意義」という名の下に、部活動を学習指導要領の中に囲い込もうとする姿勢は、生徒や教員のためではなく、自らの権益を守るための「防衛策」に見える。

 たとえ活動の場が地域へ移ったとしても、それが「学校教育」のラベルを貼られている限り、学校側は管理責任から逃れられない。外部団体との調整、トラブル対応、事故への備え等々。「地域移行で負担減」という美辞とは裏腹に、教員には「管理業務」という新たなタスクが積み上がることは火を見るより明らかだ。

 政府は2029年度末までの地域移行を目指しており、すでに一部の先進的な自治体では部活動を全廃し、地域クラブへの完全移行を完了させている。
 その一方で、学習指導要領には「学校教育の一環」と書き続ける。となれば、部活動が存在しない学校があるのに、指導要領にはその意義が謳われることになる。この壮大なダブルスタンダード。

 この話は2031年度からの新学習指導要領に関わるものだ。ということは、2040年度までの方向、方針を定めるものだ。くだらないお役所同士の縄張り争いの結果、先生たちがこれ以上疲弊して行くの何としても阻止しなくてはなるまい。