何かと話題になるPISA学力調査の世界ランキングが上昇したというニュース。
マスコミ各社各局が扱っているが、今のところ関係取材も含めもっとも詳しいと思われるのがこちら。
子どもの国際学力調査 日本は順位上昇 世界トップレベルに(12月5日 NHK)
3年に1回行われるこの調査、日本での関心が高いが他国ではどうなのだろう。
そのあたりは分からない。
はっきりしているのは、わが国においては教育政策に強い影響を及ばしていることだ。
今から20年ほど前、「PISAショック」なる言葉が生まれた。
2003年に行われた調査で「読解力」が8位から12位に後退したからだ。
この結果は教育界のみならず政界、財界などにも大きな衝撃を与え、「ゆとり教育」から「確かな学力」への転換が始まった。
その後、「数学的リテラシー」や「科学的リテラシー」は、まずまずの位置をキープしたが、「読解力」は低迷した。
それが今回、「読解力」が3位(前回15位)、「数学的リテラシー」が5位(同6位)、「科学的リテラシー」が2位(同5位)と上昇した。
特に目を引くのが「読解力」の急上昇だ。
ここで言う「読解力」が、国語教育で考えられている伝統的な読解力とは定義が異なっていることは、読者の皆さんは先刻ご承知だろう。
「読解力」が上がったのは、いわゆる読書量が増えたからではない。小説などをよく読むようになったからではない。
文学作品以外の実用的文章に触れる機会が増えたからだ。
高校国語に文学作品を一切扱わない「論理国語」という科目が新設されたことからも分かるように、PISA調査と親和性の高い国語教育が行われるようになったからだ。
PISA型読解力がこれからの時代に必要なのは分かるが、国語教育(日本語教育)として望ましいかどうかは別問題だ。
調査を実施したOECDは、組織の性格上、経済的側面から教育を測定している。
例えて言えば、文部科学省ではなく経済産業省が実施した教育調査(評価)である。
各国の教育は、その国の歴史、伝統、文化、風土などに根ざしたものでなければならないと考える。
一国際機関の一側面からの調査分析であるから、その点を踏まえて活用することが求められる。
興味をそそるのは順位(ランキング)であるが、それでは模試結果を偏差値と合格可能性でしか見ない受験生と大差ない。
冒頭あげたNHKニュースでもかなりのことが分かるが、結果の詳細は国立教育政策研究所のサイトで見ることができる。
OECD生徒の学習到達度調査(PISA)
この中に重要ポイントだけをまとめたページもあるので、ダイレクトに行きたい方はこちら。
また、OECDのサイトにもあるので、お時間に余裕のある方はこちら。
報告書の中に「レジリエント(resilient)」なる言葉が登場する。
SDGsの目標9に「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」、目標11に「都市を包摂的、安全、レジリエントかつ持続可能にする」とあるが、そのレジリエントだ。
個人的にはSDGsとは距離を置きたいと考えている私だが、弾力、復元力、回復力、強靭さを表すこの言葉、企業や学校でも広まっていいかなと思っている。
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