人は何度も接していると次第にその人に対し親近感を抱いてしまう。
 あるいは好感を持つようになってしまう。

 心理学ではこれを「単純接触効果」、または提唱者の名をとって「ザイア(オ)ンス効果」と呼ぶ。
 私自身は心理学を本格的に学んだ経験はなく、広告・マーケティングの世界の言葉として知った。
 テレビCMで一定期間に同じCMを何度も繰り返し流すのは、「単純接触効果」を狙ったものと考えられる。
 それにより、視聴者の商品に対する認知度や興味が高まり購買につながる可能性がある。

 相手と顔を合わせる頻度が増すほど好意を持つのも「単純接触効果」によるものだ。
 クラスメイトへの好意や担任の先生への好意は、相当程度、この「単純接触効果」によるものと考えられる。
 たまたま同じクラスになったり、たまたま担当になったりして毎日顔を合わせているとだんだん好きになる。
 
 もしも別のクラスだったり、別の担任だったりしたら、そちらを好きになっただろう。
 いい仲間、いい先生というのは、こうした偶然に左右されている。

 もちろん人が人を好きになるメカニズムは一通りではないだろう。
 「単純接触効果」は数あるうちの一つに過ぎない。
 また、これには逆効果もあって、一度嫌悪感を抱くと、会えば会うほど嫌いになるという面も考えておかなければならない。

 さて、その上で。
 私が推奨しているSNS(インスタグラムなど)は、「単純接触効果」と非常に相性が良いと思うのである。
 
 何かお知らせしたいことがある。
 そのためにSNSを利用する。
 もちろんこの考え方が間違っているわけではない。

 しかし、せっかく利用するのであれば、「単純接触効果」というのを意識してみたらどうだろう。
 それにはまず、ある程度投稿頻度を上げる。
 忘れたころにポツンと1件では「単純接触効果」は期待できない。
 毎日は大変だが、週に2.3本ならできるだろう。

 そのうち「単純接触効果」が効いてきて、なぜか親近感が湧いている。
 そして、一度ホームページでも覗いてみるか、あるいは実際に学校見に行ってみるか、となる。

 繰り返すが、説明会などの告知もOKだ。
 それを見て、ホームページを確認し、実際に来てくれるかもしれない。
 だから、これはこれで続けよう。

 しかし、年がら年中、説明会告知では、親近感や好感度には結びつかないだろう。
 そこで前々から推奨しているのが、学校生活だ。
 流すべき情報
 1 授業
 2 行事
 3 部活
 4 生活
 これらをバランスよく投稿しよう。
 繰り返し、そう言っている。

 SNSを見ただけでいきなり出願してくる受験生などいない。
 まずは興味をもつ、親近感を持つ、好意を持つという前段階があって、出願という行為はそのずっと先にあるのだ。
 SNSに期待されるのは、この前段階の部分である。

 SNSを単なる告知媒体とお考えになっている方がいたとしたら、ぜひ一度「単純接触効果」という視点を持っていただきたい。