第1回進路希望調査に関する話題が続く。
ここからは、注目校の動向を見て行こう。
予定では、数日間かけて、次の3点を見て行こうと思う。
1 新規開校6校の倍率はどうか
2 定員の増減があった学校の倍率はどうか
3 別学校の倍率はどうか
では、今日は「新規開校6校の倍率はどうか」である。
1 新規開校6校の倍率はどうか
令和8年4月、6つの学校が開校する。
(1)岩槻
普通科 1.37倍
国際教養科 0.98倍
旧岩槻(普通科)は直近3年間の第1回平均が1.21倍であるから、それと比べると高い倍率が出ている。また、旧岩槻(国際文化科)の直近3年間平均が0.88倍であるから、その後継である国際教養科もそれと比べると高い倍率が出ている。
国際教養科は埼玉県では初の学科。全国的に見ても千葉県に3校(松戸国際など)あるくらいで、他にはほとんどない。「初めて」や「唯一」は募集マーケティング的には大きな強みであるが、その分知名度が低く、受験生から見た場合、情報も不足する。残り3か月でどこまで知名度を高められるか。
(2)秩父
普通科 0.89倍
国際教養科 0.18倍
普通科単独校だった秩父に、統合に伴い国際教養科が新設された。旧秩父の普通科200人定員を、普通科160人と国際教養科40人に振り分けた形だ。
和光国際・国際科には外国語科、岩槻・国際教養科には国際文化科という前身の学科がある。そこで積み上げて来た実績(学校側からすれば蓄積したノウハウ)は、新校新学科への期待感や信頼感につながっている。しかし、秩父・国際教養科には残念だがそれがない。希望者数の少なさはそのあたりにも起因しているのではないか。
今のところ40人募集のところ7人(男3・女4)しか希望者がいない。普通科からの第2志望合格を期待できる状況でもない。最低でも20人でスタートを切りたいところだ。
(3)和光国際
普通科 1.55倍
国際科 1.19倍
普通科は、旧和光国際の第1回平均が1.69倍だから、それよりは低いものの今回の1.55倍は全県普通科では17位の高倍率である。
国際科は県公立で初めて、かつ唯一の学科である。岩槻のところでも書いたが、「初めて」や「唯一」は募集マーケティングにおいては「パワーワード」ではあるのだが、中身がよく分からないなどの不安感や警戒感を抱かせる危険性もある。十分な実績のある学校・学科であるのだから、「外国語科改め国際科。でも中身はほぼ外国語科」でいい。
生徒たちは、常に片手に希望と期待、片手に不安と迷いを携えて前に進もうとする存在である。新校新学科に対する期待を高めるだけではなく、安心も与えてあげないと一歩が踏み出せない。
(4)越生翔桜
普通科 0.41倍
美術表現科 0.83倍
新校移行に伴い普通科が80人募集から120人募集となる。低倍率の原因はそこにもあるのだが、旧越生・普通科は、少なくともここ10年間、第1回で1倍を超えたことはなく10年間平均も0.52倍であるから今回の低倍率もやむを得ないところである。
美術表現科は40人募集に対し33人の希望者がいる。旧越生・美術科時代は、第1回で1倍に達したのは10年間で一度しかなく、直近3年間は0.45、0.75、0.45で推移していた。したがって今回の0.83倍は浮上のきっかけになりうる数字だ。現状、通信制などでしか学べない「アニメ」を前面に出したのが奏功したと考えられる。思い切って「アニメ学科」とすればもっと関心を集めただろう。学科名は美術表現学科だが、美術科よりも芸術総合高校・映像芸術科に近いイメージを出して行ったほうが集めやすいかもしれない。
(5)八潮フロンティア
普通科 0.96倍
ビジネス探究科 0.39倍
旧八潮南は、普通科・商業科・情報処理科が各80人募集で合計240人。これが新校となって普通科、ビジネス探究科、各120人となる。学校全体の規模は旧八潮南と変わらない。
カタカナ校名は県公立初。ビジネス探究科も県公立初。何度も言うが、「初めて」は期待半分、不安半分なので、期待感だけ盛り上げようとすると思わぬ落とし穴が待っている。
旧八潮南・普通科は、第1回では平均1.35倍であった。今回希望者114人だが、去年までの80人募集なら問題なかった。ただ、120人募集に増えたため僅かに1倍に届かなかった。
ビジネス探究科は分類としては商業に関する学科である。したがって必須として簿記なども学ぶ。それはそれで問題はないのだが、今の時代、商業高校を出て就職という将来を描いている子はどんどん減っている。進路については「大学や専門学校への進学・就職の両方に対応します」と謳っているが、進学重視を打ち出したほうが選ばれやすいだろう。
(6)大宮科学技術
機械工学科 0.75倍
電気工学科 0.35倍
建築デザイン工学科 0.61倍
ロボット工学科 0.26倍
情報サイエンス科 1.06倍
上の4つが工業に関する学科、最後の一つ「情報サイエンス科」は県公立で「初めて」の情報に関する学科である。これまでにも情報と名の付く学科はあったが、それらは工業に関する学科や商業に関する学科に分類されるものだった。
今回6つの新校が誕生するが、専用の新棟(新校舎)を建てるのはここだけ。
従来の工業高校のイメージを根本から変えようとしている。だから校名も「工業」から「工科」をすっ飛ばして「科学技術」とした。伝統ある学校だから就職はいくらでもできる。超一流企業にだって入れる。だから、これから目指すのは大学進学。しかも国公立含めた有名大学。
個人的な注目は女子の希望者数だ。このことは何度も言っている。サイエンスやテクノロジーに関心を持つ進学志向の女子が集まる学校になれば学校のブランドイメージが根本から変わる。今のところ「情報サイエンス科」は希望者85人中11人が女子だ(占有率12.9%)。低い数字ではないが、もう少し高くてもいい。「建築デザイン工学科」はインテリアデザインなども学ぶので女子も選びやすい学科だ。現状は希望者48人中、女子は14人(占有率29.2%)。率としては上々だが80人募集なので、もう少し頑張らなければいけない。ちょっと残念なのは「ロボット工学科」が全体でも10人と少なく、女子がゼロだということだ。AIロボットの開発には女子力も必要だ。

コメントを残す