連休中のことだ。
 ちょっと離れたところまで車で買い物に行った。
 商品は事前にネットで調べ決めていた。
 AmazonなどECサイトで買い物することが増えた昨今だが、今回は実物を見てからにしたかった。
 むろん店舗在庫もネットで確認してから出かけた。

 店に着いた。
 商品はあった。
 が、自分が想像していたものとちょっと違った。
 いや、ネット情報に噓があったわけではない。
 ただ、自分の描いたイメージとは微妙に違っていた。
 (買うの)やめよう。
 年寄りは諦めが早い。

 と、そこに店員がやって来た。
 これこれこうで「(買うの)やめた」と説明した。
 店員は、「それは申し訳ありませんでした」と恐縮したが、別にあんたが悪いわけじゃない。
 帰ろう。
 と思ったが、店員が「せっかくお越しいただいたのですから、お時間あるようでしたら、どうぞ他の商品もご覧になってください」と勧める。
 それもそうだ。
  
 店員はさらに。
 「1点、お勧めの商品があるんですが、説明だけさせてもらってもいいですか」とたたみかけてくる。
 そのくらいはいいよ。まだ店に入ってから5分も経ってないし。
 店での滞在時間と購入量(購入金額)はある程度比例するはずだから、店員たるもの一度入店した客をそう簡単に帰してはいけないのである。

 店員が勧めたがった商品、これがなかなかよろしい。
 買うつもりだったものとはカテゴリーも機能も異なるのだが価格は近い。
 よし、これ買おう。
 と、これはまあ決断力があるのではなく、単に年寄りは気が短いというだけである。

 さてそこで。
 大層回りくどい話をしているが、なぜ瞬間的に決断できたのかという話だ。
 たぶん私が、商品を見に来たのではなく、買いに来ていたからである。
 買う気満々だったからである。
 財布に金も用意してきたからである。
 (実際は現金払いではなくカード支払いだが)

 さあ、ここまで書けば勘の良い先生方はもうお分かりだろう。
 これからの説明会や相談会は、見に来たり調べたりしに来ているのではなく、決めに来ているのである。
 「今日ここで決めたい」と思って来ているのである。
 むろん、「まだもう少し見て」という親子だっているだろうが、私立は来月早々にも出願が始まろうとしている。そういう時期なのだ。

 決めるために来ている親子に対して、何が親切かと言ったら、決断の後押しをして差し上げる、これしかないではないか。
 2,3か月前のイベントには手ぶらでやって来たかもしれないが、今は財布を持って来ている。

 「高校選びは人生の重大な選択だから、いろいろ調べて悔いのない選択をしてください。その中に本校も候補の一つとして含めていただければ幸いです」
 って、何を言っているのだ。
 全然決断の後押しになっていないじゃないか。

 今週末、11月8日(土)は、今年度最後の説明会集中日である。
 「今日ここで決めよう」
 そう思ってやって来る親子も多いだろう。
 もちろん全員がそうであるわけではないが、もしそういう親子が来ていたとしたら、どういう言葉が刺さるだろうか。そこを考えたほうがいい。