塾対象説明会、通称「塾説」について語ろうと思う。
 昔の塾説と、これからの塾説。
 そんな話である。

◆昔の私立塾説はほとんど接待
 塾業界も世代交代が進んだので、若い方は経験がないと思うが、平成の後半までの私立中高の塾説は、ほぼ接待と言っていいようなものだった。
 (なお、ここでは埼玉県に限定した話をする)

 そもそも会場がホテルや結婚式場という時点でその性格が分かろうというものだ。
 むろんホテルを使えば、運営サービス面で学校の負担が軽くなるメリットもある。
 参加者のアクセス面でもメリットが大きい。
 だが、ホテルを使うのは飲食付きの会合とするためである。
 学校によっては酒類が供されることもあった。
 
 参加者にはお車代などと称して金券が配られるのが普通だった。
 クオカードだったり図書カードだったり。
 中にはすばり現金という学校もあった。
 金額的には3000円から5000円程度。
 そして、帰りにはお土産までついた。

 これ、どう見ても接待でしょう。
 食わせて、飲ませて、お金渡して、お土産つけて。
 今ならとうてい許されないが、当時はコンプラもクソもなかった時代なので、当たり前のように行われた。

 第1部説明会、第2部懇親会が、平成中頃から後期にかけての私立塾説だった。

◆次第にビジネスライクな塾説に
 時が移り、世の中の価値観も変わった。
 私立学校の地位も格段に向上した。
 塾業界も効率性を重視するようになった。
 
 場所は基本的に学校で、時間も1時間程度。
 外部会場を使うとしても公共施設。
 せっかく学校に来てもらったのだから、希望者には施設設備や授業の様子を見てもらう。
 飲食はなく、たまにお持ち帰り用の軽食を出す学校があるくらい。
 1000円程度のクオカードや、ボールペン・クリアファイルなどのグッズが配られたりもするが、せいぜいその程度。

 かくして昭和の香りすら漂う昔ながらの塾説は姿を消し、仕事本位の塾説に変わった。
 もちろんこれは好ましい変化だ。
 
◆目立つ公立の塾説
 数年前から公立の塾説が増えて来た。
 私立が接待抜きで仕事本位の塾説に移行したことで、公立もやりやすくなった。

 塾説は、塾の先生の仕事スタイルからして、平日午前中開催とする必要がある。
 この時間、学校の先生方は授業中であるが、仕事本位の塾説は管理職ほか数人の少ないスタッフで運営できる。

 今年度は大宮高校が初めて塾説を開いた。
 今週末(11月15日)には遅ればせながら浦和一女が塾説を開催する。
 残るは浦高なのだが、ここは当分やらんだろう。いったん始めたことは長く続ける学校だが、新しいことには腰が重い。伝統を守る。すなわちディフェンス中心の学校であり、ここが積極的にオフェンスを仕掛けてくる大宮高校との違いだ。

◆令和スタイルの塾説へ
 塾説というイベントが今後さらに増えるのか、それとも減るのか。
 今のところ不明だが、ここ数年の状況を見れば、増えることはあっても減ることはなさそうだ。

 その上で言えば、「接待まがい」から「仕事本位(実務本位)」と来て、今後は「コミュニケーション重視」ではなかろうか。
 せっかくリアルで会っているのだ。
 学校側からの一方的かつ実務的な情報提供だけではもったいないではないか。
 ほぼほぼ年に1回と限られた機会であり、時間も厳しく制約された中ではあるが、「交流と情報交換」の場として活用すべきだろう。
 もちろん、学校側からの塾訪問といった別の機会もあるわけで、そこで「交流と情報交換」はある程度補完できる。

 ただ、塾説の場合、その学校に関心を持つ人たちが一堂に会するのだから、参加者同士の「交流と情報交換」の場ともなりうるわけである。
 いろんな立場の人、いろんな考え方の人がいるので、こうでなければと言うつもりはない。
 自分はそうするというだけだ。
 「ここで出会ったのも何かの縁、みんなでこの学校を応援しようぜ」
 そんな雰囲気の集まりになれば、開催した学校にとってもこれまで以上に意味を持つイベントとなるだろう。