昨日、熊谷工業高校に行ったことは書いた。
 新聞社が企画した生徒座談会の司会進行を務めるためだ。座談会の記事編集も担当するので、詳しい内容はそちらに譲るが、今日は生徒たちの発言から考えたことを書いておこうと思う。

 参加したのは5つの学科から集まった5人の生徒たち。
 なぜこの学校を選んだのか。なぜその学科を選んだのか。
 そんな質問をしたところ、5人がそろって「好き」という言葉を使った。

 機械が好き。コンピュータが好き。ものづくりが好き。
 興味深いのは、必ずしも数学や理科が得意なわけではないということだ。
 数学は苦手。でも機械は好き。
 理科は得意じゃない。でもコンピュータは好き。
 得意だから選んだのではない。好きだから選んだ。

 そして、彼らは言う。「好きなら何とかなる」。
 これだ。

◆工業高校は好きか嫌いで選ぶ学校
 かつて工業高校は、普通科に行けない生徒が行く学校と見られた時代があった。
 しかし、さらに時代をさかのぼり、1960年代の高度経済成長期には、工業高校は技術者を目指す生徒たちの積極的な進路選択先だった。

 その後、大学進学志向の高まりや産業構造の変化、高校の序列化などによって、工業高校の社会的な位置づけは変わっていった。
 と、ここで歴史を振り返っても仕方ない。
 要は、人気が低下し、定員割れが常態化している学校・学科が多いということを言いたい。

 その現状を踏まえて、いま私が訴えているのは、「無理に定員を満たそうとするな」ということだ。
 これは定員割れを放置せよという意味ではない。
 そうではなくて、工業高校の教育内容に関心のない生徒まで、数合わせのために集めてはいけないという意味だ。

 工業高校には専門科目があり、実習がある。本人が望んでいない勉強を3年間続けるのは苦痛だろう。
 座談会に集まった生徒も、「好きなら何とかなる」が、その逆だと毎日が苦痛だろうと言っていた。

 つまり、好きでもない生徒が増えることは決して好ましいことではなく、生徒にとっても学校にとっても不幸な結果を招く可能性が高い。

 もちろん、入学後に初めてものづくりの面白さに目覚める生徒もいる。だから、最初から強い職業意識や専門知識を求める必要はない。
 学力が高いか低いかという話でもない。
 大事なのは、その学校で学ぶことに興味や関心を持てるかどうかだ。
 昨日の5人が教えてくれたのは、まさにそのことだった。

◆このまま定員割れでも構わない
 来週には第1回進路希望状況調査の結果が発表される。
 おそらく工業科、商業科、農業科など、伝統的な職業学科の多くで定員割れの数字が並ぶだろう。
 志願者が少ないのは残念なことだが、今回、「〇〇工業」と書いてくれた子は、「好きな」子たちだ。
 では、この子たちに入ってもらって、「好きな」ことを学び、「好きな」道に進んでもらおう。
 実習の多い専門学科は、20人か30人がちょうどいいくらいだ。1クラス40人というのは、普通科基準の考え方だから、そっちに合わせる必要はない。

 まあ、普通科と専門学科の間で揺れ動いている子もいるかもしれないから、そういう生徒たちには自校の教育内容や学ぶ楽しさを丁寧に伝えてあげるべきだが、それで増えるのは数人だろう。

 出願ぎりぎりまで説明会を開くのはやめにして、むしろ中1・中2、あるいは小学生に、ものづくりの楽しさを伝えるようなイベントをやったほうがいいだろう。