公立の先生から発せられる言葉に口コミというのがある。
 経験の範囲で言えば、私立の先生から聞くことは少ない。

◆公立の先生が大好きな口コミ
 私は連休明け2週間で公立6校を訪ねているが、半数の学校で聞いた。
 公立の先生は口コミがお好き。

 口コミと対比されるのはマスコミである。
 マスコミは元からあった言葉だ。
 それに対して誰かが口コミという言葉を造語した。
 大宅壮一の造語と言われているが、確かなことは分からない。
 仮に大宅壮一の作だとすると、大宅が亡くなったのは1970年であるから、50年以上前からあった言葉ということになる。

 公立の先生が大好きな口コミは、「私立と違って公立は予算(お金)が無いから、生徒募集は口コミに頼らなければならない」と、こんな文脈で使われる。
 大学はいざ知らず、私立中高がそれほどマスコミを使った広告を展開しているとは思えないが、一定の予算を生徒募集に割いているのは確かだ。
 学校案内パンフレット一つとっても、公立が20~30万円のところ、私立はゼロがもう一つ多いだろう。

◆今や口コミもタダではない
 「金がないから口コミ」。
 ということは、もしかしたら口コミはタダだと思っているのか。
 だとしたら、時代錯誤も甚だしい。
 たしかにTVCMや新聞・雑誌広告に比べたら安いかもしれないが、口コミは決してタダではない。

 AさんからBさんへ、BさんからCさんへと伝言ゲームのように広がって行く。
 あるいはまた、井戸端会議などから知り合いへと広がって行く。
 このような広がり方をイメージしているとしたら、昭和の発想だ。

 口コミマーケティングという言葉があるくらいで、現代の口コミはPCやスマホやSNSを駆使して行うものだ。
 口コミは作るものだ。
 口コミには仕掛けが必要だ。
 だから口コミはタダというわけには行かないのだ。

 公立の先生方には、まずこの発想から変えてもらったほうがいい。

◆むしろ口コミの方が難しい
 テレビや新聞などマスの広告であれば、発信側は方法や内容やタイミングを好きなように選べる。
 だが口コミは、他人頼みの部分が多い。
 コントロールが難しい。
 まったくコントロールできないわけではないが、マスよりも難しい。

 だから私は「口コミで広げるんだ」と聞くと、難しい方法を選んだものだと思ってしまう。

◆バズとバイラル
 口コミ大好きの公立の先生方であればご存知かもしれないが、口コミマーケテイングには「バズマーケテイング」と「バイラルマーケテイング」という二つの代表的な手法がある。
 「バスマーケテイング」は一気に広げることを狙うものであり、「バイラルマーケティング」は時間をかけてジワジワ広げることを狙うものである。
 厳密さを欠く説明だが、とりあえずそう考えてもらおう。
 「バズマーケテイング」のバズは「バズる」という言葉でお馴染みだ。

 「バズマーケテイング」においてはインフルエンサーを利用した「インフルエンサーマーケティング」という手法が取られることがある。
 自社(自校)から発信するだけでなく、大量のフォロワーを持つ影響力のある人を利用する。
 また最近では、特定の分野に影響力があるマイクロインフルエンサーを利用したほうが高い効果があるという考え方も広まっている。

 というわけで、一言で口コミといっても、なかなか奥が深いのである。
 「金がないから口コミ」。
 出発点はそれでいいとしても、何もしないのに自然に広がるわけではないので、しっかりした戦略を立ててもらいたい。