本日取り上げるニュースはこちら。
文化祭後のコロナ集団感染は不動岡に次いで2校目。
「<新型コロナ>春日部高校で116人感染、学校閉鎖に…3、4日に一般公開された文化祭は1万人来場で混雑」(6月14日 埼玉新聞)
では、ゆっくり解説。
6月3日(土)・4日(日)に文化祭を開催したのは県立の不動岡と春日部、私立の春日部共栄だ。
(春日部共栄は前日の豪雨の影響で4日の一日開催に変更)
このうち2校で集団感染が起きたとなれば、マスコミとしても放っておくわけには行かない。
コロナのネタはまだまだ稼げるのである。
なお、この場合の「稼げる」は、「PV(ページビュー)を稼げる」の意である。
マスコミがCMや広告の収入で成り立っている業界であることは皆さんご存知のとおりである。
よって、テレビなら視聴率、新聞や雑誌なら購読者数(販売部数)が命である。
そして、近年はこれにネットが加わった。
ネットでその記事がどれだけ読まれたか、あるいは月間、年間でどれだけのPVがあったか、それが広告単価に跳ね返ってくるという構造が生まれた。
◆PVは見出しで決まる
PVを増やすには見出しが重要である。
いや、それがすべてと言ってもいい。
とにかくクリック(タップ)してもらわないと始まらない。
今回の埼玉新聞の見出し。
紙の新聞とネットニュースとで比較してみよう。
紙版「春日部高校で116人感染 新型コロナ 文化祭に1万人来場」
ネット版「<新型コロナ>春日部高校で116人感染、学校閉鎖に 3,4日に一般公開された文化祭は1万人来場で混雑」
太字の部分が紙版には無い部分である。
紙版は紙面スペースが限られているので、見出しに多くを費やすわけにはいかない。
メインの見出しは、基本10文字以内、できれば6~8文字、サブの見出しは12~15文字程度で表す。
それに対しネットの方はスペース上の制約から自由だ。
完全自由とまでは言えないが、紙版に比べ制約はかなり少ない。
そこで上記のような長ったらしい見出しになる。
◆「混雑」と言うが、見て来たのか
私が一番注目したのが「混雑」という言葉だ。
「116人感染」「学校閉鎖」は事実である。
「一般公開された」も「1万人来場」も事実だ。
だが、「混雑」は単なる想像だろう。
記者が実際に取材に行き、現地の様子を見た上で「混雑」という表現を用いたのであれば、まだ分かる。
が、行ってはいないだろう。
1万人来場と聞いて、知らない人は驚くだろう。
だが、不動岡にも約8千人(同校HPによれば7969人)来ているし、一日限りだった春日部共栄にも6千人超(同校HPによる)が訪れている。翌週開催だった花咲徳栄も雨の中8千人の来場者を数えている。
コロナ以前の統計だが、秋開催の浦高、浦和一女、川越、川越女子を始めとする人気校はどこも1万人超が普通だ。
たしかに普段1000人ほどで過ごしている学校に一日当たり5千人がやって来れば混雑と言えないこともない。
だがいっぺんにやって来るわけではなく、バラバラにやって来てバラバラに帰り、後で集計してみたらそういう数だったというだけだ。
◆PV稼ぎに協力するする人々
記事は、あからさまに学校を悪者にするような書き方はしていない。
しかし、「コロナがまだ完全に収束したわけでもないのに、文化祭を一般公開で行い、それにより1万人もの人々が来場し混雑した結果、集団感染を引き起こした」と読めるような記事を書き、見出しをつければ多くのPVが稼げるだろうという計算が働いたのだろう。
この記事はYahoo!ニュースにも転載されたので、かなりのPVを稼げたろう。
その意味では成功している。
Yahoo!ニュースには「ヤフコメ民」と呼ばれる匿名の人々がいて、頼まれてもいないのにコメントを付けてPV数増加に協力してくれる人がいる。
記事を盛り上げてくれる人だ。
ありがたい話だ。
が、かく言う私もこうしてブログで取り上げ、記事に誘導しているのだから、やっていることは変わらん。
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