滋賀県大津市で保育園児が交通事故に巻き込まれ2人が命を落とした。
 事故を起こした女性が非難されるのは当然として、今回はマスコミの報道姿勢にも多くの疑問が投げかけられた。

 批判が集中したのは記者会見だ。
 保育園は被害者側なのに、記者たちはまるで加害者であるかのように質問をしているではないかというわけだ。
 そうなのだ。
 あれがかれらの日常なのだ。園側が記者会見を開き、テレビ中継されたので世間の知るところとなったが、かれらにとって普段通りの平常運転なのだ。

 おそらく記者会見は園側が設定したのだろう(報道側の要請もあったかもしれない)。
 放っておけば記者たちは理事長や園長、保育士さんたち、保護者の皆さんに、次々に聞いて回るだろう。別に被害者及びその関係者が記者の質問に答える義務はないわけだが、かれらも「コメント取れませんでした」では社に戻れないから一言でも二言でも声を拾うまで引き下がらない。
 ならば、いっそ記者会見を開いて被害者ご家族や園の先生たちへの直接取材を少しでも減らそう。そういう意図だったのかもしれない。

 記者会見を見て、園側は被害者なのに責められているようだと言う人がいるが、もう一度言う。かれらはいつものように質問しているだけだ。

 さて、この記者会見の模様を見て、テレビのワイドショーやコメンテーターが騒ぎ出した。事故について扱うのはいい。が、世間と一緒になって記者会見での態度や質問を批判するってどうなのよ。

 テレビと新聞は一体でしょう。日テレ=読売新聞、テレ朝=朝日新聞。ニュースキャスターやコメンテーターは、記者と同じ側にいるわけだよ。
 記者の態度や質問に問題があると思うなら、「同じ側にいる人間として恥ずかしい、申し訳ない」。そこから入って行くべきだろう。
 でもまあ無理だろうな。「記者のバカヤロー」とか言っているコメンテーターだって、滑稽さはよく分かっている。だが、そう言わないことには使ってもらえない。

 「集団的過熱取材」という言い方がある。「メディアスクラム」などと呼ばれることもある。
 マスコミは「報道の自由」という大義の下、被害者・加害者及び関係者に殺到し、その結果、取材対象のプライバシーを侵害したり、平穏な社会生活を妨げてしまうことがある。「集団的過熱取材」の問題点は以前から指摘されているところだが、ネット社会が本格化し、視聴率や購読者数、PV数(Page View)をめぐる競争が激化した今、改めてこの問題が注目されている。
 新聞協会がだいぶ前に反省したはずなのにという記録が見つかったので時間のある方はどうぞ。
 集団的過熱取材に関する日本新聞協会編集委員会の見解