少し前の話題になるが、10月15日、県教委から「埼玉県公立学校教員採用選考試験の結果について」という発表があった。
 より詳しいデータはコチラ。
「採用試験の詳細データ」
 
 なお、ここでは埼玉県のデータを取り上げるが、文部科学省のHPを見ると全国の状況が分かる(但し、元年度が最新)。
 全国の教員採用の状況

 正直なところ、これまで採用試験のことなどあまり興味がなかった。よって、このブログでも取り上げていないと思う。
 が最近、志願者が減り、倍率もずいぶん下がっているという話なので、実態を調べてみようと思ったわけである。

 今年度の倍率は次の通り。カッコ内は昨年。
 小学校 2.5倍(2.6)
 中学校 4.2倍(5.3)
 高校  6.9倍(6.5)
 
 小学校は横ばい、中学校は下がり、高校はやや上がっている。
 よく、景気が良く民間企業の採用意欲が高いときは教員希望者が減ると言われているが、景気動向に左右されやすのは高校や中学校で、小学校には景気の影響はあまり見られないとされている。
 また、景気の動向は新卒よりも既卒に現れやすいとも言われている。
 採用試験に落ちた人は、非常勤などをやりながら翌年を目指すことが多いのだが、民間に働き口が多いときはそのまま民間に行ってしまい、再チャレンジ組が少なくなる。

 ということで、志願者数や倍率はその時の民間の動向なども見ていかなければならない。
 ここしばらく民間の新卒採用は学生側の売り手市場だったことを考えると、相対的に教員希望者が減るのはある意味当然かもしれない。
 が、それにしても3倍を切るというのはどうなんだろう。
 かなり心配な数字だ。
 いわば経験則であり科学的に証明されたものではないが、倍率が3倍を切ると人材の質という面でかなり重大な問題が発生するとも言われている。

 中学校や高校の生徒募集と同列に論じるわけにはいかないが、志願者が少なく倍率が低下すれば、質の面でもいろいろと問題が生じるのは先生方も経験済みだろう。
 合格された方にケチをつけるつもりは毛頭ないが、採用側としては深刻に受け止めなければなるまい。

 景気の動向よりも、職業としての先生の魅力が低下しているのではないかという見方がある。
 直接大学生に接していないのでよく分からないが、これだけ学校のブラック職場ぶりが叩かれれば、学生の意欲が低下するのもやむを得ないだろう。

 私は途中で教員を辞め、どブラック(そんな言葉あるのか?)と言っていいような企業に勤めた経験があるので、なんだかんだ言っても学校はホワイトだよなと思ってしまうのだが、それはあくまでも「個人の感想です」というやつだ。
 勤務時間なんてあってないようなものだし、土日返上なんて当たり前。有給休暇も絵に描いた餅で実際問題自由にはとれない。
 経験したことのない部活の顧問をやらされ、それでまた勤務時間が増え休日が奪われる。
 悪ガキがいるのは仕方ないが、モンスターペアレンツなど親の面倒まで見なけりゃならない。
 ちょっと頭を撫でりゃ体罰、バカと言えばパワハラ言葉の暴力、容姿に僅かでも触れようものならセクハラ。
 まあ民間も似たようなものだが、これで先生は楽しい職業だなんて言えるわけがない。

 これも「個人の感想です」のレベルで聞いてもらえればいいのだが、いま語られているブラックの部分をすべてホワイトに変えて行くと、おそらく子供たちと接点が減っていく。かれらと共に過ごす時間が減っていく。
 予算がネックになるが、部活動は外注できる。行事も外注できる。生活指導も進路指導も外注できる。何なら授業も外注できる。
 さて、そうすると先生って何をやる人なの? 学校ってそもそも何をやるところなの?となる。
 ここの議論が必要だ。
 そういう部分の社会的合意が形成されないままに、先生の働き方(勤務条件)だけを取り上げるから話がまとまらない。

 話を採用に戻すが、魅力ある職場や仕事に人材が集まるのだから、やはり志願者減と倍率低下は深刻に受け止めなければならない。
 むろん県当局はとっくの昔から危機感を持っているのは知っているが、私たちのような外部の人間も及ばずながら何かお手伝いをしなければと思うのである。