森喜朗・東京五輪組織委員会会長、昭和12年生まれ83歳、石川県出身。元首相。
 衆議院議員を引退し表向きは政界から退いたが、その後も国家的イベントの中枢に身をおいているところをみると、いまだ影響力は衰えていないようだ。政治の世界は不思議である。

 この方は議員・首相時代も数々の舌禍事件を引き起こしている。麻生太郎氏と並ぶ失言のデパート。
 政治家でもタレントでも、たまに失言すると大きな痛手となるが、この方のように口を開けば失言という域に達すると、世間の批判などどこ吹く風である。別に羨ましくはないが、ある意味大したものだと感心してしまう。

 今回は、日本オリンピック委員会(JOC)評議員会で「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」と発言したことが問題化した。
 これはJOCの理事会を念頭に置いた発言なのか?
 だとすると、JOCの女性理事はマラソンの高橋尚子さん、シンクロの小谷実可子さん、柔道の山口香さん、新体操の山﨑浩子さんらであるから、この人たちのことか?
 いや、たぶんそうではなく、この手の会議や委員会全般を指しているのだろう。
 だから女性差別、女性蔑視だと問題になった。

 だが私は、この方のより大きな問題点は、女性だろうが男性だろうが、自分の意見に賛同しない者、黙って聞かない者を排除しようというところにあると思う。
 権力を持った年寄りにはよく見られる傾向だ。
 ご本人も「女性を蔑視する意図は全くなかった」と述べているが、そうだろう。
 蔑視しているのは女性だけではないのだ。

 私自身は権力も持っていないし、何かの権威というわけではないが、年寄りというだけで周囲が何かと気を使ってくれたりする。
 それで結構自分の言い分、時には我儘が通ってしまったりもする。
 これはいい気分だ。
 若い頃には経験できなかったことだ。

 だが、きっと蔭では早く引退しないかと願っているのだ。
 もしかしたら早く死ね!かもしれない。

 年寄りの身の処し方、社会との関わり方を考える上で、自身も反省し、参考にしなければならない。
 
 今回の舌禍は、新型コロナ陽性者が期待したほど増えず、それに代わるネタを必死で探していたマスコミの格好の餌食となった。
 時期が時期である、役職が役職である。そこに女性蔑視である。
 ここに飛びつかない手はない。
 しばらくはこの問題で持ちきりとなるだろう。
 ただし、次のネタが見つかるまでである。

 女性は会議を長引かせるか?
 個人的経験の範囲では、会議を徒に長引かせる輩は性別に関係なく存在する。
 私がこのような考えを持つに至ったのは、古くから比較的女性の割合が多い学校という場所が仕事場だったからかもしれない。
 小中に比べれば女性割合が低い高校ではあるが、それでも女性が一人もいない教科や学年というのは存在しなかった。辞めてから30年近く経つが、当時からそうだった。

 その点、政治の世界はまだまだ女性進出が進んでいない。
 森氏個人には大いに問題があるのは当然だが、今どき男だからどうだ女だからどうだというような考えの人でもトップに立てるのが政治の世界なのだ。
 政治の世界には、第二、第三の森どころか第100、第1000の森が存在する。
 そう考えれば、森氏が辞任したところで「はい、解決」とはならないことが分かる。

 マスコミは例によって海外からも批判の声が上がるなどと騒ぎ立てているが、いい加減そのパターンはやめてもらいたい。
 海外ガー、世界ガ―、じゃなくて日本の問題なのだ。普通に考えておかしいだろう。
 新聞やテレビは、「うちの会社の役員の半分は女性ですが、それで会議が長引くなんてことはありません」とわが社を引き合いに言い切れればいいんだが、
 残念! 女性の登用は政治の世界と似たり寄ったりだった。