今さらながら「させていただく」の話である。ちょっと乱発し過ぎではないかと言われたのは5年も10年も前のことだ。
 が、その後も濫用は収まらず、むしろますます加速しており、この語を聞かぬ日はないような有様である。
 そこで今日は、この得体の知れない丁寧語または謙譲語について書かせていただくことにする。

 最近読んだ本にもそのことが書いてあった。
 新刊ではない。2009年8月第1刷発行とある。
 
 私はAmazonの読み放題に登録しているのでkindle版(電子書籍)0円で読んだ。

 数日前に受け取ったメール文に、こんなのがあった。
 「先日お伺いさせていただいたお話の件ですが、より詳しく聞かせていただきたいと思い、メールさせていただきました。」
 おいおい、自分で書いてて変だと思わんのか。
 「先日伺った件、より詳しくお聞きしたいと思い、メールいたしました。」
 これでいいんじゃないの。

 「させていただきます」は別に間違った日本語ではない。
 「明日、お休みを取ってもよろしいですか」
 「どうぞ」
 「では遠慮なく休ませていただきます」 
 これはありだろう。相手の許可が必要な場合だ。

 では、これはどうだ。
 「この度、新製品を出させていただきました
 いや別に他人の許可は要らんだろう。
 勝手に出しといて何をぬかす。
 「この度、新製品を出しました」で十分だ。

 確かに手っ取り早く丁寧化するには便利な言い方だ。
 私もついつい使ってしまう。
 だが、慇懃無礼ということもある。
 度を超した丁寧さはかえって無礼であるし、ひょっとしたら自分のバカさ加減を晒していることになるかもしれない。
 よし、「させていただきます」を自らの語彙から抹消しよう。

 と、思ったのだが、やってみるとこれがなかなか難しい。
 ついでに、余計な「お」や「御」も省こう。
 「申し上げます」も「よろしくお願いします」も極力排すことにしよう。
 そんなことを思っていると、キーボードを打つ手がしばしば止まる。
 何度も書き直すことになる。

 「明朝、改めてお電話させていただきますので、よろしくお願い申し上げます」
 今までなら、こう書いていたところだが、
 「明朝、電話します」となる。
 うーん、これでいいのかな。
 でもまあ、ビジネスメールならこれでいいか。
 
 冒頭紹介した野口恵子さんの本の中にも、ふだんたくさん使っている人が減らすには大変な努力が要ると書いてあった。
 でも、そうやって、さまざまな言い換えを考えることで表現力が磨かれるというようなことも書いてあった(と思う)。

 まあ野球で言えば、直球主体のピッチングといったところか。
 文字数抑えて、用件を簡潔に伝えよう。

 どうも最近、私からのメール文がやけに素っ気ないと思っている皆さん。
 そういうわけなのだ。

 もう少しお時間をいただくことができれば、皆さんにご満足いただき、かつ失礼のない文章が書けるようになると思いますので、それまでしばらくの間お待ちいただければ幸甚に存じます。
 長いか。

 そのうちまともな文章書けるようになるから、もうちょい待ってくれ。
 乱暴すぎる。

 まともな文章が書けるようになるまで、もう少し待ってください。
 落としどころはこのあたりか。