8月末に起きた女子高生死体遺棄事件。墨田区に住む女子高生はSNSを通じて容疑者と知り合ったという。
 事件の全容はまだ分からないが、SNSの恐さについては改めて子供たちに注意喚起をしなければならない。
 などということは、私ごときが言うまでもないことだ。

 大の大人だって騙されるのだから、不届き者の大人が未熟な子供を騙すなどたやすいことだ。

 昔、我々は「人を見たら泥棒と思え」と習った。
 だが最近は泥棒の人権にも配慮が必要なのか、あまり使われなくなった。
 あまり疑い深い子供に育てるのもどうかと思うが、SNSは便利な反面、犯罪に巻き込まれる危険性を持つものだ。
 便利な車が時に凶器になり得るのと同じことだ。

 さて、この事件。
 一点気になることがあったので、特に学校管理職や広報担当の先生にお伝えしておこう。

 私はこのニュースをネットニュースで知った。
 仕事柄、どこの学校かというのはやはり気になる。
 が、どうせそのうち明らかになるだろうと、調べようとは思わなかった。

 ところが、最初の方で見た動画ニュースに、女子高生が通っている学校の校長が登場し、なおかつ校舎を背景としていたので思いがけず知ってしまった。
 うーん、これはまずい。
 まずそう思った。

 被害者女子高生の実名と顔写真がこれでもかとさらされていることに怒りを覚えたが、まさか早々に校長が出てくるとは。
 これでは、「被害者はわが校の生徒です」と世間に公表しているようなものではないか。
 むろん東京には200を超える私立高校があるから、校長が顔を晒したぐらいでは学校は特定できないのが普通だが、それにしても軽率だ。

 しかも、細かいことを言うようだが、学校の玄関先で、普段着でインタビューに応じている。
 在校生が亡くなっているいるんだから、せめてダークスーツにネクタイだろう。
 こんなシチュエーションで「真面目ないい子でした」と言われてもね。
 街頭インタビューじゃないんだから。

 管理職の先生方、不幸にもこのような事態に遭遇したとき、真っ先にやるのはマスコミ対応じゃないですよ。
 まして今回は不祥事を起こしたわけでもないし、むしろ被害者側。
 マスコミは加害者や被害者の周辺取材をして、読者・視聴者の興味をつなごうとしているわけで、その片棒を担ぐ必要がどこにある。

 タイミング的には夏休みを終え、新学期というところだから、始業式でもそのことに触れないわけにはいかない。
 なにせ、あれだけ顔が出てしまったのだから、同級生はみんな知っている。
 まさか無視を決めつけるわけにもいくまい。
 とりあえず教職員を緊急招集して(それはたぶんやったと思うが)、在校生対応が先決だ。
 世間やマスコミはすぐ忘れるが、同級生はそうはいかない。

 先生方にも、今後、個々の取材には応じないよう厳命する。
 どうしてもという場合は、窓口は副校長なり教頭なりに一本化する。
 校長ダイレクトというのは基本避けるべきである。

 学校の不祥事の場合だったら、あらかた状況がつかめた時点で記者会見するという手もある。
 校長が出て行って説明しないと、責任回避と言われる。
 しかし今回は、そうではないので、個別取材に対して、さしあたりノーコメントは許される。

 捜査途中で、まだ分からないことが多い中、どんな子だった、何部に属していた、どんな進路希望を持っていたと、率先してマスコミにネタを提供するのは適切ではない。
 校長も気が動転していたのだろう。

 私は教員経験はあるが管理職経験はない。
 だから、自分が同じ立場だったら、この校長と同様の行動をとってしまったかもしれない。
 その上で言うが、今回の対応はまずかった。