午後、都内でちょっとした会合があり、夕方戻って来た。
レストランでの昼食付だったが人数が4人だからだろうか、入り口での検温、手指の消毒はあったが、それ以外は特に変わったことはなかった。
つまり、ワクチン接種証明や陰性証明などを求められることはなかった。
テーブルにはアクリル板が設置されていた。
「はずしてくれますか」とお願いしたら、すんなり撤去してくれた。
距離を取るために6人がけのテーブルに4人だったが、余裕があって丁度いい。
さて。
帰って来てから、大学入試共通テストの問題を解いてみた。
この時期の恒例である。
仕事上どうしても必要というものではない。
むしろ不要。
ただ、ボケ防止には役立つ。
一応、かつては高校社会科教員だったから、日本史・世界史・地理・政経あたりは何とかなる。
内容も基礎基本だけだし、記号選択だから、それほど時間はかからない。
と、威勢のいいことを言っているが、では満点を取れるかというと、残念ながらそうは行かない。
やはり普段使わない知識は失われて行くものだ。
まあこの年で、再び教壇に立つことはないだろうから別にそれでもいいけど。
社会に限ったことではないが、近年の入試問題は非常に手が込んでいる。
対話形式やレポート形式の文章を読まされ、資料やデータを読まされ、その後に設問へと移って行くスタイル。
こういう問題作り(作問)が出来る人は、本当にすごいと思う。
出来上がった問題にあれこれ突っ込みを入れるのはたやすいが、創作には力が要る。
今それが出来ないのは当然だが、現役時代でも出来なかっただろう。
いや、絶対に出来なかったと自信をもって言える。
最近は、あるテーマを持ちながら問題を解いている。
そのテーマとは、「中学生の知識でどこまで答えられるか」である。
たとえば日本史Bにこんな問題がある。
「横浜と鉄道で結ばれた群馬県や長野県からは、開港以来の主要輸出品である( ア )が輸送された。また、九州では、産業革命のエネルギー源である( イ )が鉄道により積み出し港まで輸送された」
これは、問題文の一部。
そして設問は。
「空欄( ア )( イ )に入る語句の組み合わせとして正しいものを、次の①~④のうちから一つ選べ」
①ア綿織物 イ石炭
②ア綿織物 イ石油
③ア生糸 イ石炭
④ア生糸 イ石油
開国後、生糸が輸出品の主力であることは、むろん中学歴史教科書に書かれているし、何なら過去には高校入試でも出題された実績がある。
エネルギー源についても、教科書に「動力源としての石炭の採掘が筑豊などで進んだ」と出ている。
まあ常識的に考えても石油より石炭が先なのだが。
世界史の方は中学校での扱いが少ないのでかなり苦戦すると思うが、日本史Aや日本史Bの中には、このように中学生でも解けるレベルの問題が結構ある。
裏を返せば、中学校の基礎基本がしっかりできていれば共通テストは案外楽勝ということだ。
他教科のことはそこまで自信をもって言えないが、たぶん同じだろう。
手の込んだカンニングなんて不要だ。
というわけであるから、基礎基本の重要性を知らしめるために、問題を選んで中学生にやらせてみるのもいい。
それと、高校入試の作問担当者は、最近の大学入試問題の形式や内容についても、しっかり研究していると思われるので、入試問題のトレンドを知るという点でも良い教材となり得るだろう。
2022-01-29 at 22:04
いつも大変興味深く拝読しております。
今回の共通テストの数学ⅠAですが,実はまだじっくりとは解いていないのですが,ざっと問題を見たところでは,確かに問題的な難化も見られましたが手も脚も出ないほど難しい,という感じは受けませんでした。
ただ,対話形式の問題や日常生活に絡めた問題などが多かった点と,問題文の異様な長さのため読解力が不足していると問題自体が読み解けないのではないかという点では難しいと言えるのかもしれません。
また,定理や公式は丸暗記で使えればいい,問題を見て解き方を脊髄反射的に経験則による記憶から引っ張り出す,という単純で機械的な『イン‐アウトプット』だけの従来のセンター対策のような勉強ばかりでは太刀打ちできなかったというだけなのでは?と思いました。
どんな基本事項でも,定理や公式の導出なども含め,ただ丸暗記するのではなく丁寧に理解する(仕組みや理屈を)という学習をしていれば,経験上の記憶にない問題でも解ける形に落とし込めると思います。(というか,そういう意図で問題を作成していると思います。)
経験上の記憶に頼る勉強だと,何年か前に埼玉公立高校入試で空間図形中の三角形の合同の証明やら解の公式の証明やらが出題されたときのように,「こんなのやったことない!」「そこまで覚えてない!」となって解けないのではないかと思います。
記憶に頼る学習だと容量にも限界はあるでしょうし,第一,学習内容が広大すぎます。
『イン‐アウトプット』だけでなく開智未来の関根前校長が仰るような『スループット』をして,「解ける(または解き方のパターンを記憶している)」状態よりさらに上の「理解している」状態まで持って行くような勉強を高校生はもちろん,中学生にもさせなければと,今回の共通テスト騒乱を見て感じました。
長文コメント,失礼いたしました。