入試本番が近づき、受験生はかつてない集中力で勉強に励んでいることだろう。
 いいことだ。
 周りから見れば、「その努力をなぜもっと前からしなかった」というところだが、多くの人間はそんなものだろう。
 今さらやっても手遅れだと努力を放棄してしまうより、最後までジタバタした方が、後々良いことがあるだろう。
 現状の気力、体力、学力の範囲内で最高到達点を目指して欲しい。

 言うまでもないが、試験では1点が明暗を分けることがある。

 上から順に合格者を決めて行って最後の一人を決める。
 その最後の合格者と、それに及ばず不合格となった次の一人との差は、10点20点と大きく離れることはなく、通常は僅差(わずかな差)である。
 1点差、2点差ということも多い。
 仮に4点差としても、それは数学の計算問題1問の差に過ぎない。

 箱根駅伝で有名な東洋大学の合言葉が「1秒を削り出せ」であることはよく知られている。
 入試に置き換えれば、「1点を絞り出せ」といったところだろうか。
 それは本番当日の心構えでもあるし、残された数日間の心構えでもある。

 あと1点多く取るための勉強とはどのようなものか。
 それは得意教科を集中的にやることである。
 これと言って得意がないというなら、強いて言えばこちらがややましという程度でもいい。
 まちがっても苦手に時間を費やしてはいけない。

 試験では、半分くらい理解していれば得点できることもある。
 ただ確率的には非常に低い。
 7割から8割くらい理解していれば、得点確率がだいぶ上がってくる。
 ただしそれは、記号選択式問題の場合であり、記述・論述では苦しい。

 どんな出題パターンでも完璧に得点するためには、いま現在7割、8割に達している知識を10割に持って行くのが得策である。
 5割の理解にとどまっているものを、7割、8割に引き上げたところで、得点の可能性は大して上がらない。
 それに、5割の理解というのは、基礎から分かっていないということだから、遡ってやるべきことが多過ぎて膨大な時間を必要とする。どう考えても今やるべきことではない。そのままで高校に入るのはまずいから、入試が終わってからはやったほうがいい。

 不安を解消したいという気持ちはよく分かる。
 そのために、あれやこれや手を広げてしまう受験生が多いのだが、不安を解消したからといって必ずしもそれが自信となるわけではない。
 いま欲しいのは自信である。
 戦いには武器が必要だ。
 自信は武器になる。

 これからの数日間を、不安を減らすために使うのか、自信を増すために使うのか。
 両方を叶えるのは困難であるから、残り時間は自信を増すために使おう。
 本番当日、頼りになるのは、「十のあいまいな知識より、一の確実な知識」である。