昨日に続き、志願先変更に関する話題である。
 最初に確認しておきたいのは、志願先変更のしくみは何のためにあるかだが、これはもうはっきりしている。
 倍率を見て志願先を変更したいという人が少なからずいるので、そのために設けたのである。

 よって、志願先変更における視点はただ一つ、倍率である。
 校風がどうのとか、進学就職実績がどうのとか、部活がどうのとかは、この際脇に置こう。
 そういう比較は、最初の出願時までである。

 志願先変更するかどうか、また、どこに変更するかは倍率次第である。
 確実に公立に受かることを優先するなら、学力的にはワンランクかツーランク低く、なおかつ倍率もそれほど高くない学校に変更すればいい。
 何なら、定員割れ状態の学校を選べばいい。
 それが合格に一番近い方法だ。

 さて、ここでは昨年のデータをもとに、倍率によって受験生にどのような動きがあったかを見てみよう。
 普通科の場合である。

◆出願倍率が1.50倍以上
 昨年は大宮、川越南、市立川越(普)、市立浦和、川口市立(普)の5校が出願倍率1.50倍以上であった。
 これら5校はすべてが志願先変更により結果として志願者が減少し倍率は低下した。
 今年も市立川越(普)、市立浦和(普)、川口市立(普)の3校は、希望調査時点で2倍を超えていたことから、出願時倍率も1.9~2.0倍の高倍率となる可能性がある。
 この倍率を見て、あえてこれらの学校に変更してくる受験生は少なく、他校に変更する人の数の方が多いだろう。

 昨年の例から導かれる結論は、出願時倍率が1.50倍以上の学校は、流入より流出の方が多く、結果として志願者は減少し、倍率は低下するということである。
 ただし、昨年も大宮(1.57→1.51)、川越南(1.77→1.67)、市立川越・普(1.64→1.64)、市立浦和(1.99→1.90)、川口市立・普(1.81→1.73)であったことから、志願先変更によって劇的に倍率が低下することはないだろう。

◆出願倍率が1.40倍以上
 昨年は7校(コース含む)あった。
 このうち、浦和(1.43→1.34)、浦和一女(1.46→1.36)、浦和西(1.40→1.38)、南稜(1.40→1.35)、日高・情報(1.43→1.23)の5校が低下した。
 所沢北(1.43→1.43)、川口市立・スポ科学(1.48→1.50)の2校がやや上昇した。
 人数で言うと所沢北は1人増、川口市立・スポーツ科学は2人増であった。
 
 1.40倍超えはかなりの高倍率であるから、やはり流入より流出が多くなる。
 今年も何校かは出願時で1.40倍を超えるだろうが、それらは倍率が下がることはあっても、上がる可能性は低いとみていいだろう。

◆出願倍率が1.30倍以上
 昨年は8校あった。
 このうち、川越(1.37→1.36)、川越女子(1.30→1.29)、越ヶ谷(1.38→1.36)、越谷南・普(1.32→1.27)、不動岡(1.33→1.32)、大宮北・普(1.35→1.33)の6校が低下した。
 越谷北(1.34→1.36)、蕨(1.35→1.36)の2校が上昇した。
 人数で言うと越谷北は7人増、蕨は3人増であった。

 全体で見れば1.30倍超えは、やや高倍率といったところなので、基本的には流入より流出の方がやや多くなる。

◆出願倍率が1.20倍以上
 昨年は15校あった。
 上尾(1.23→1.21)、朝霞(1.23→1.20)、朝霞西(1.25→1.23)、伊奈学園(1.24→1.24)、春日部(1.28→1.28)、春日部女子・普(1.24→1.20)、坂戸西(1.21→1.13)、志木(1.29→1.22)、草加東(1.20→1.13)、所沢中央(1.25→1.19)、豊岡(1.23→1.19)、鳩ケ谷・普(1.27→1.21)の12校が低下した。
 所沢(1.22→1.23)、浦和南(1.21→1.21)の2校が上昇した。
 本庄(1.27=1.27)は変わらなかった。
 ※伊奈学園、春日部、浦和南は志願者の増減はあったが、四捨五入の関係で倍率は同じになっている。
 
 1.20倍台は特に高い倍率とは言えないが、坂戸西、草加東、所沢中央、豊岡あたりは過去の倍率から考えて高過ぎると考えた人が多かったと考えられる。
 今年も出願時で1.20倍超えは多数出現するだろうが、例年と比べてやや高めに出ている学校は下がり幅が大きくなる可能性がある。

◆出願倍率が1.10倍以上
 昨年は14校あった。
 上尾鷹の台(1.17→1.14)、川口(1.14→1.14)、川口青陵(1.10→1.08)、熊谷西(1.13→1.12)、狭山清陵(1.12→1.11)、新座柳瀬(1.18→1.12)、深谷第一(1.13→1.13)、八潮・普(1.17→1.12)の8校が低下した。
 春日部東・普(1.13→1.14)、越谷東(1.12→1.13)、三郷北(1.11→1.11)、与野(1.16→1.16)、和光国際・普(1.13→1.14)の5校が上昇した。
 熊谷女子(1.13→1.13)は変わらなかった。
 ※川口、深谷第一、三郷北、与野は志願者の増減はあったが、四捨五入の関係で倍率は同じになっている。

 1.20倍以上では、志願先変更後の倍率は下がる傾向が見られたが、1.10倍以上となると、上がる学校と下がる学校がほぼ半々という状態になってくる。ただ、上がるにしても下がるにしても、その変化は非常に少ないことが分かるだろう。

◆出願倍率が1.00倍以上
 昨年は25校あった。
 上尾南(1.09→1.00)、浦和東(1.04→1.03)、越生・普(1.03→1.00)、越谷西(1.03→1.02)、草加南・普(1.03→1.02)、羽生第一(1.00→0.98)、深谷(1.09→1.04)、富士見(1.02→1.00)、三郷(1.07→1.01)の9校は低下し、入間向陽(1.03→1.08)、岩槻(1.02→1.03)、浦和北(1.03→1.05)、大宮光陵・普(1.03→1.05)、大宮武蔵野(1.02→1.04)、川口北(1.00→1.05)、川口東(1.01→1.03)、久喜(1.06→1.09)、熊谷(1.00→1.03)、鴻巣(1.09→1.09)、草加西(1.03→1.06)、所沢西(1.05→1.08)、新座(1.02→1.03)、飯能(1.03→1.04)、宮代(1.04→1.04)の15校が上昇した。
 秩父(1.01→1.01)は変わらなかった。
 ※鴻巣、宮代は志願者の増減はあったが、四捨五入の関係で倍率は同じになっている。

 1.00倍台となると、上昇する学校の方が多くなってくる。
 さまざまな事情で低倍率となっているが熊谷や川口北あたりが1.00倍前後であれば、これは狙い目(チャンス)とみるべきで、予想通り志願者増、倍率上昇となった。
 1.00倍台の学校は読みにくいが、各地域でそれなりに評価が高い学校が出願時において低倍率であった場合は、上昇する可能性が高い。

◆出願倍率が0.90倍以上
 昨年は15校あった。
 大宮東(0.92→0.94)、大宮南(0.97→0.98)、桶川西(0.96→1.00)、北本(0.92→0.94)、坂戸・普(0.99→1.01)、庄和(0.94→0.96)、草加(0.99→1.05)、鶴ヶ島清風(0.94→0.95)、ふじみ野(0.94→0.99)、松伏・普(0.97→1.02)、松山女子(0.96→0.97)の11校が上昇した。
 日高・普(0.96→0.96)は低下した。
 松伏・情報(0.98→0.98)、松山(0.90→0.90)、鷲宮(0.99→0.99)の3校は変わらなかった。

 ここまで来るとさすがに低下する学校はなくなる(日高・普のみ1人減)。
 ただ、定員割れ状態を脱したのは坂戸・普、松伏・普、草加など数少ない。

◆出願倍率が0.80倍以上
 昨年は8校あった。
 上尾橘(0.81→0.87)、岩槻北陵(0.83→0.86)、桶川(0.87→0.90)、川越西(0.88→1.01)、杉戸(0.86→0.91)、飯能南・普(0.82→0.87)、和光(0.87→0.92)の7校が上昇した。
 鴻巣女子・普(0.85→0.85)は変わらなかった。

 ここからさらに低下する学校はなく、すべて上昇している。ただし、定員割れ状態を脱したのは川越西のみである。

◆出願倍率が0.70倍以上
 昨年は8校あった。
 小川(0.76→0.81)、川越初雁(0.75→0.80)、栗橋北彩(0.78→0.81)、白岡(0.79→0.81)、妻沼(0.75→0.76)、八潮南・普(0.78→0.94)の6校が上昇した。
 児玉・普(0.74→0.72)は低下した。(実人数では1人減)
 大宮光陵・外(0.78→0.78)は変わらなかった。

 ここから定員割れ状態を脱した学校はなかった。

◆出願倍率が0.60倍以下
 昨年は5校あった。
 児玉・外(0.45→0.48)、蓮田松韻(0.58→0.60)、鳩山・普(0.47→0.49)、飯能南・スポーツ(0.20→0.23)、八潮・体(0.45→0.58)の5校はいずれも上昇した。

 ここから定員割れ状態を脱した学校はなかった。

 志願先変更により、どの程度の志願者増減があり、倍率変化があったか。
 以上が、普通科110校(コース含む)の昨年の結果である。
 少しは参考になるかもしれない。