長いこと埼玉県民をやっている私だが、昨日、初めて戸田漕艇場に行った。
 むろんギャンブル(戸田ボート)ではない。
 埼玉新聞記者に同行し、浦和一女ボート部を取材するためだ。
 
 戸田漕艇場は前回、1964年の東京五輪でボート会場として利用された。
 全長約2500m。

 数少ないボートコースなので、実業団、大学、高校の各チームが練習に集まって来る。
 コース脇には、東大、一橋大、東工大、東北大、早大、慶大などの艇庫が並ぶ。
 あまりにも広いので、どこに行っていいのやら分からない。
 艇の整備をしている筋肉モリモリの大学生に聞いてみようと思ったが、シャツの背中に「TOKYO」とあったので、やや気後れした。
 そこに、明らかに高校生と思われる制服姿の男子がやってきた。
 「浦和一女の練習取材に来たんですが、高校生の皆さんは、どのあたりにみえるんでしょうか?」
 男子「ちょうど、このあたりで待てば、会えると思います」
 「有難うございます。ところで皆さん、どちらの高校ですか?」
 男子「開成です」
 なんだよ、結局「TOKYO」みたいなもんじゃないか。
 それにしても、このあたり、やたら偏差値高めだな。

 そうこうするうちに、一女生らしき女子がボチボチ集まって来た。
 えっ、自転車?
 浦和からここまで自転車で来るのか。
 聞けば、自転車通学の子は自転車で、電車通学の子は電車でここまでやって来るのだという。
 浦和から赤羽に出て埼京線「戸田公園」なら20分程度。
 徒歩時間含めても40~50分といったところか。
 授業が終わるとさっさと学校を後にするから、知らない人からは帰宅部と思われているかもしれない。

 浦高、大宮、越ヶ谷、川口市立、南稜、浦和商業、慶応志木。
 ボート部のある学校、全員集合。
 こうやって、いつも同じ場所で練習しているんだ。
 他の競技ではなかなか見られない光景だ。

 今日は文武に励む高校生ということで、生徒インタビューがメインだ。
 で、そちらは新聞社に任せて、私はもっぱら顧問の先生に取材する。
 大宮高校出身の女性指導者。
 高校・大学とボート選手だった。
 
 私はスポーツ全般、そこそこ知識はあるつもりだが、ボートについてはまったく無知だ。
 先生に、次々と質問を浴びせ、初歩の初歩から教えてもらった。

 ●オリンピックでは第1回から行われている歴史の古い競技である
 ●欧米発祥の上流階級のスポーツである。
 そう言えば、オクスフォード対ケンブリッジというのが有名なのがあった。
 ●大別すれば、漕ぎ手の人数によりエイト(8人)、フォア(4人)、ペア(2人)、シングル(1人)の4種目ある。
 ●高校生にはエイトはない。
 ●高校生は舵手つきクォドルプル、ダブルスカル、シングルスカルの3種目。
 ●距離は高校生の場合、原則1000m
 ●真っ直ぐ進むのが難しい
 ●ゴールに背を向けて進む珍しい競技
 結果、勝者は自分以下全員を確認することができ、それが快感。

 中学校には無い部活なので、ほぼ全員が初心者。
 指導者や練習環境に恵まれれば、関東大会や全国大会への道が開ける。
 浦和一女も、先ごろ行われた関東大会に出場し、舵手付き4人スカルで準優勝している。
 今週末、インターハイ予選が行われるが、新人大会、関東大会予選でもこの種目では県制覇しているので、きわめて有望である。

 部員は何と30人以上。
 腹筋、背筋、スクワット。
 ダイエットとは無縁の筋トレ女子高生が、こんなにもいるのか。
 
 日が沈むまで船漕いで、自転車漕いで家まで帰って、ちゃんと勉強もする。
 大したものだ。

【追記:6月19日】
 全国高校総体予選が6月17,18の両日、戸田漕艇場で行われ、浦和一女は舵手付き4人スカルで優勝。
 愛媛県で行われる全国高校総体(インターハイ)に出場する。