再編整備に関する記事がよく読まれている。
本ブログの固定読者は主に高校や塾の先生方である。
もう少し広げて入試や受験に関係するお仕事をされている方々である。
しかし、再編整備に関しては、一般の方(ここでは受験生や保護者の皆様も含まれる)からのアクセスも多いようだ。
◆意外だった大宮工業と浦和工業の統合
今回発表された再編整備案についてだが、個人的には概ね想定の範囲だった。
唯一、予想外だったのは大宮工業と浦和工業との統合だ。
浦和工業が統合対象に挙がるというところまでは想定内だったが、相手は距離的にも近い「いずみ」あたりかと何となく考えていた。大宮工業だったのは予想外である。
それと、時期はもう少し先送りされるのではないかと予想していた。
工業高校の維持には金がかかる。
つい最近も大宮工業で導入されたばかりのマシニングセンターを見てきたが、一機(一台)数千万はするはずだ。
昨年は川越総合、今年は熊谷農業・児玉白楊に行き、温室を見てきたが、これも一棟作るにはマンションが買えるほどの建設費がかかる。ただ、農業高校は数が少ない。
それに比べ工業高校は数が多い。
だから、金のかかる工業高校を少し整理したい。
というのが、前々から県教委の考え方だったと思う。
が、難しいのは人事問題だ。
工業高校を減らせば工業の先生(工業の教員免許を持った先生)の処遇に困る。数学や理科の免許も併せ持っていれば普通高校への異動も可能だが、工業だけの先生は工業高校の中でしか動けない。
再編整備は受験生の側から見れば、学校の選択肢が減るということだが、先生の側から見れば、職場が減る、もしくはなくなるということだ。
これは農業高校や商業高校といった職業系の専門高校に共通の課題だ。
そんな事情も考え、工業高校の統合(事実上の一方の廃校)は時間がかかるだろうと思っていたが、意外に早く実現した。
まあ、いずれは手を付けなければならないことではあるが。
◆第3期の再編整備はどうなる
再編整備計画は第1期から第3期まであり、今回の第2期で半分以上終わった。
第1期で、(児玉白楊・児玉)、(飯能・飯能南)。
第2期で、(岩槻・岩槻北陵)、(和光国際・和光)、(秩父・皆野)、(八潮南・八潮)、(越生・鳩山)、(大宮工業・浦和工業)。
教育関係者には常識だが、再編とか統合とは言っているが、事実上、一方を廃校にするわけである。
目標は134校を121~124校にすることだ。
(県立の計画だから市立は関係ない)
それには10校~13校の削減が必要で、ここまで8校減らしたから、あと2校~5校を減らす必要がある。
◆残るは県央地区、利根地区
県は再編整備計画において、地域バランスを考慮するとしている。
地域の分け方は、①から④まで大きく4つである。
そして、それらがさらに2~3地区に分けられている。
①南部・さいたま市・県央
②南西部・川越比企・西部
③東部・利根
④北部・秩父
普段我々が慣れ親しんでいるのは東西南北の4区分だ。
基本的にそれに沿った形となっているが、この分け方だと10地区となっている。
地区割についてはコチラにある。資料の7ページ目だ。
地域区分と構成市町村
単純計算で各地区で1校減らせば、最低目標の10校削減が達成される。
では、ここまでで1校も減らしていない地区はどこか。
①のうち南部、県央
③のうち利根
南部は、川口市、蕨市、戸田市で構成される。
県央は、鴻巣市、上尾市、桶川市、北本市、伊奈町で構成される。
利根は、行田市、加須市、羽生市、久喜市、蓮田市、幸手市、白岡市、宮代町、杉戸町で構成される。
これらの市や町では今のところ、再編対象となった学校はない。
したがって、次の段階では、これらの市や町の学校が対象になる可能性が高い。
南部の川口・蕨・戸田は3市合わせると人口は80万人に達する。
学校の数はむしろ足りないくらいだ。
定員も280人規模が最小で、定員割れが常態化している学校はない。
よって、南部の学校を削減するのは難しい。
県央はどうか。
人口では上尾市が22.8万人でもっとも多い。
ここに上尾・上尾鷹の台・上尾橘・上尾南と4校ある。
募集で苦しいのは上尾橘だ。
160人募集で34人の欠員補充。
人口7.4万人の桶川市に、桶川・桶川西の2校がある。
人口10万人以下で普通科校が2校あるのは、他には9.2万人の東松山市(松山・松山女子)があるくらいだろう。
桶川西は160人募集で34人の欠員募集という状態であるから、同じ市内の桶川や、隣接市の北本との統合という線も考えられる。
利根はどうか。
高校の無い市や町をこれ以上増やさないという観点に立てば、複数校ある市が候補になる。
該当するのは、久喜市(久喜・久喜北陽・鷲宮・栗橋北彩・久喜工業)と羽生市(羽生第一・羽生実業・誠和福祉)だ。
誠和福祉は敷地が加須市にまたがっており、かつては不動岡誠和や不動岡女子と名乗っていた学校だから加須市にカウントしてもいいかもしれないが、これを除いても人口5.3万人の羽生市に普通科の羽生第一、専門学科の羽生実業、定時制の羽生と3校あるわけで、これはちょっと整理が必要ではないか。
久喜市の方は、200人募集の栗橋北彩が最小規模で、募集にはやや苦しんでいるが、それでも90%以上はキープしている。
160人募集でぎりぎりの羽生第一、4科160人募集で欠員補充79人の羽生実業の方が問題は深刻だ。
高校の無い市や町があってもいいと言うなら、200人募集で欠員補充64人の蓮田松韻、200人募集で欠員補充14人の宮代、160人募集で欠員補充30人の白岡なども危険水域だ。
以上、今回は地域バランスという点にだけ着目した今後の予測だ。
なお、計画の完成年度は令和11年度なので、逆算すると次の第3期の計画案が出されるまで、あと3~4年かと思われる。
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