今日はなぜ休日なのかというと、敬老の日だからである。
かつて9月15日だったが、2003年から9月第3月曜に固定された。
どうでもいい情報だが、9割の人はそれを知らない。
ただの三連休の一日。
移動に車を使うか、電車を使うか。
その時の状況によるが、個人的な電車移動のメリットは、その間を読書に当てられることだ。
昔は車内で新聞や本を読む人が多かったが、今は9割がスマホをいじくり回している。
別のそのことに文句はない。
個人の時間の過ごし方に注文つけてどうする。
自分は自分。
と、いうような前振りをしておいて、つい最近、車内読書した本の紹介である。
「伝え方が9割」(佐々木圭一著:ダイヤモンド社:定価1540円)
片道45分、往復1時間半で読了。
約200頁のハウツー本なら、こんなものだろう。
ちなみに、本の読み方としては、電子書籍リーダー(kindle)だったり、紙の本だったり、その時の気分次第。
今回は紙の本。
本の帯に、このようにある。
「この本で学べば、あなたのコトバが一瞬で強くなり、人生が変わります」
って、そりゃあないだろう。
本一冊読むたびに人生変わったんじゃ、忙しくていけねえ。
これが本当なら、行って帰って来た時点で私の人生が変わっていなくてはいけないが、いつもと同じだった。
が、本を手にしてもらうには、このくらいのことを恥ずかしがらず言えるようにならないといけない。
そのかいあってか、この本は2013年の初版以来、版を重ね、累計120万部を突破しているという。
著者は博報堂のコピーライター出身だ。
博報堂は、電通に次ぐわが国第二位の広告代理店。
この「~9割」という言い方は、出版界では古くから用いられているものだ。
「人は見た目が9割」(竹内一郎著:新潮新書)が刊行されたのは2005年であるが、瞬く間にベストセラーとなった。
確かなことは言えないが、「9割」が書名タイトルに頻繁に用いられるようになったのは、このあたりからだろう。
出版界では、二匹目、三匹目のドジョウを狙って、類似本を出すのは、恥ずかしいことではないのである。
この姿勢は見倣ってもいい。
ただ、明確な科学的根拠が求められるケースで使ってはいけない。
学校が、「生徒の9割が満足」などと言いたいなら、統計学的な根拠を示さなければならない。
しかし、この本は学術書でも研究論文でもなく、よくあるハウツー本であるから、好き勝手に言うことが許される。
私は、何かを学ぼうと思ってこの本を手にしたわけではない。
著者のような一流のコピーライターではないが、とりあえず、コトバを商売道具にしている者だ。
恥ずかしげもなく言い放つが、基礎は出来ている。
だから、小ネタに使えればいいかな。
その程度だ。
現にこうしてネタとして使わせてもらっている。
これで元は取れたかな。
そんな気分。
では、読む価値はないかというと、そうとも言えない。
筆者は、「強いコトバ」をつくる5つの技術を紹介している。
1 サプライズ法
2 ギャップ法
3 赤裸々法
4 リピート法
5 クライマックス法
中身を詳しく紹介してしまうと著作権侵害や営業妨害になる恐れがあるので、一つだけ挙げておこう。
ギャップ法というやつだ。
「事件は会議室で起きてるんじゃない。現場で起きてるんだ」
ご存知「踊る大捜査線」での名セリフ。
「事件は現場で起きているんだ」でも意味的には通じるのだが、前半にそれと正反対のコトバを入れることで、本当に言いたいことの強さが増すというわけだ。
「これは私の勝利ではない。あなたの勝利だ」。
こちらはオバマ前大統領の就任演説。
「これは、あなたの勝利だ」でも意味は通じるが、「私の勝利ではない」を入れたことで人々は感動した。
ちなみに、これはオバマ氏付きの有名なスピーチライターのアイディアと言われている。
以上のような事例を挙げつつギャップ法と名付けた技術を紹介しているのだが、毎度毎度これをやられてはうっとおしいと思う。
が、決め台詞には良さそうだ。
テストの結果が良かったら、「これは私の授業の結果ではない。みんなの努力の結果だ」と言ってやる。
年に1回だけ使う秘密兵器。
「授業は今から始まるんじゃない。昨日の夜、家で始まっているんだ」。
なんか、説教臭くてイケてない。
「私は元来疑り深い人間だ。だがお前らを疑ったことは一度もない」。
生徒指導で使ってみるか。
と、応用編を考えてみるのも面白い。
著者の主張には概ね賛同できるが、一つだけ賛成しかねる点もあった。
「サプライズ法で一番カンタンなのは『!』を付けること」(本文123頁より)
プロがこういうこと言うから、みんながこれでもかと「!」を付けまくる。
「文化祭が行われました!」
「修学旅行に行ってきました!」
ホームページ見ると、大体こんな感じ。
「!」は不要だと思うよ。
「昨夜の雨で校舎1階が水没!」
「体育祭、校長先生張り切るもアキレス腱断裂!」
「どうした野球部! まさかの初戦敗退」
このくらいだと、「!」も活きてくると思う。
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