都立高校入試に導入が決まっている英語スピーキングに関して、反対の動きが起こっている。
「都立高入試への英会話活用見送る案、立憲が都議会で提案へ」(毎日新聞:9月21日)
これは教育とは無関係の政治的な動きだろう。
「中学校英語スピーキングテスト(ESAT-J)」の入試への活用に反対しているのは都議会・立憲民主党である。
だが、立憲民主党は、自民党・都民ファースト・公明党・共産党に次ぐ都議会第五勢力(つまり一番少ない勢力)なので、条例案を提出しても可決する可能性はほぼ無い。
マスコミがこの動きを大きく取り上げたのは、時節柄入試ネタは関心を集めやすいということもあるが、与党である都民ファーストの会の一部に、立憲案に同調する動きがあるからだろう。
都民ファースト内部に不協和音が漂えば、小池都政にとっては痛手となるだろう。
そういったことも含めて、受験生のことなど全く考えていない政治的な動きであると推測するのである。
◆導入決定は昨年9月
ちょうど1年前、令和3年(2021年)9月24日、東京都教育委員会は、「中学校英語スピーキングテスト(ESAT-J)」の入試へ活用について、次のように発表した。
「東京都立高等学校入学者選抜において、令和5年度入学者選抜(令和4年度実施)から中学校英語スピーキングテスト(ESAT-J)の結果を活用し、英語4技能のうち「話すこと」の能力をみることとしました」。
元の資料(報道発表)はコチラ。
「東京都中学校英語スピーキングテスト事業について」(2021年9月24日:東京都教育委員会)
◆中学校英語スピーキングテスト(ESAT-Jの概要
2022年7月には、受験生向けに次のようなお知らせが配布されている。
「中学校英語スピーキングテスト(ESAT-J)のお知らせ 〜 都⽴⾼校⼊試への活⽤について 」
概要を整理すると、次のとおりである。
●スピーキングテストは、11月27日に実施される。
●2月の学力検査の時ではなく、事前に実施される。
●活用されるのは、入試区分のうち「第一次募集・分割前期募集」においてである。
●テストの結果(評価)は調査書に記載される。
●合否は、学力検査点・調査書点・ESAT-J点の総合点で決まる。
●総合点の内訳は学力検査点(700点)、調査書点(300点)、ESAT-J点(20点)である。
◆テストへの疑問
「話す力」が大事なのは分かるが、それを入試に組み込む必要があるのかという意見がある。
また、小論文や面接や実技や、その他いろいろな要素を組み入れると入試が複雑化し、受験生の負担が増すのではないかという意見もある。
ESAT-J未受験でも都立は受けられる。
その場合、本人の英語学力検査点に近い生徒のESAT-J点を元に点数を算出する。
このような方法で、不公平が生じないかという意見もある。
ESAT-Jは外部企業(ベネッセコーポレーション)が実施する。
録音された音声はフィリピンに送られ採点される。
このことから、素人の採点でいいのか、特定の企業に丸投げしていいのか、それで試験の公平性や妥当性が担保できるのかという意見もある。
いずれも傾聴すべき意見だとは思う。
が、1年前に方針決定していたのである。
反対の動きを起こすなら、この時だろう。
異論はあるにしても、事実上の決定事項であるから、以来、受験生も中学校も塾も、それを前提に受験準備を進めてきた。
それを、テスト実施まで2か月、すでに申込受付まで済ましてしまった段階で延期だの見直しだのと騒ぐのは、受験生の立場に立ったものとは到底思えない。
入試を政争の具にするべきではない。
なお、都立高校の「入学者選抜実施要綱・同細目」は、間もなく発表される(昨年は9月24日)。
これが正式発表であり、これに則って入試が実施される。
今さら覆らない。
そういうタイミングだと分かっていての反対であるから、単なる政治的な思惑によるものとしか見えないのである。
【9月23日加筆】
当記事をアップした後確認したところ、東京都教育委員会は22日、入試実施要項を発表していた。
「令和5年度東京都立高等学校入学者選抜実施要綱・同細目について」(9月22日)
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