秩父高校と皆野高校の統合に関連する埼玉新聞記事を紹介。
 10月21日付2面の小さな記事。
 

 県立高校の統廃合計画について復習しておこう。
 魅力ある県立高校づくり 第2期実施方策 (案)
 今年7月に発表された第2期実施方策では12校が対象となり、6校に集約される。

 時々「和光国際と和光の統合はバランスが取れない」などという感想が聞かれるが、読者の皆さんよくご存じのとおり、統合する2校のバランス(主に学力)など考えていないのである。
 バランスを考えているとしたら地域バランスだろう。
 統廃合がある地域に偏るのはまずい。
 統廃合は基本的には、一方の学校の事実上の廃校である。
 必ずしもそうとは言えないケースもあるが、多くの場合、一方をそのまま存続させ、一方をつぶす。

 秩父と皆野の統合に関して言えば、明治40年創立の伝統校・秩父をそのまま残し、皆野を事実上の廃校とする。
 統合後の新・秩父高校は、普通科と国際に関する学科を併置する。
 商業科である皆野の要素はここにはない。
 だから、残念だが皆野は廃校である。

◆なぜ今なのか
 この手の反対運動が起こるたびに思うのが、なぜ今なのかということだ。

 在校生とか卒業生とか、その学校に勤めている先生とかが「つぶさないで・・・」というなら分かる。
 自分の通っている学校や卒業した学校がなくなるとなれば、「はい、そうですか」とはならんだろう。

 問題なのは、自治体の長や議会が反対運動を起こすことだ。
 たしかに、住民の意見を行政に反映するのが彼らの仕事であるから、一見正しい行動のようにも見える。

 が、へそ曲がりの私には、よくある政治的パフォーマンスにしか見えない。
 一応反対はしましたというアリバイ作りみたいなもの。

 秩父高校はともかく、皆野高校の募集はボロボロなんだよ。
 1年生37人、2年生26人、3年生16人、計79人。
 1学年定員80人(募集は79人)であるから、3分の1しかうまっていない。
 これでは部活動も成立しにくいだろうし、授業や行事にも支障を来すだろう。
 人数が多過ぎると教育環境が悪化するというのは誰でも想像できることだが、少な過ぎた場合も、本来あるべき教育が提供できなくなる恐れがあるのだ。

 皆野高校の先生は、一人でも多くの生徒に入ってもらおうと努力されていると思う。
 今年度も学校説明会を8日間、個別相談会を4日間設定している。
 これは全県の公立高校の中に置いてみても、かなり多い方だろう。
 ただ指をくわえて眺めているわけではないことが分かる。

 が、それでも集まらないのだ。

◆町(市)に唯一の学校を守るには
 これはもう、一高校の頑張りでどうなるものではない。
 皆野町が官民を上げて、住民を巻き込み、総出でバックアップしない限り、この苦境から脱することはできない。

 じゃあ、皆野町は町内唯一の学校を守るために、何をやった。
 相手が県立学校なので町として出来ることに限界はあるだろうが、何か打つ手はあっただろう。
 後方支援は出来ただろう。
 それが行政の仕事だ、責任だ。
 (注:今回反対の意見書を出したのは皆野町議会ではなく秩父市議会であるが)

 底流には過疎化や少子化といった問題がある。
 こうしたケースでは「町(市)に唯一の高校がなくなると、ますます過疎化が進む」という議論があるが、何を言う。
 過疎化が進んだから高校が存続できなくなっんじゃないか。

 首長や議会の仕事は、作文書いて提出することじゃない。
 
 埼玉県には40市、22町、1村がある。
 この中で、元々高校がなかったり、かつてはあったが今はなくなった市町もある。
 現在、町内に公立学校が1校という町が7つある。
 
 伊奈町(伊奈学園)
 小川町(小川)
 滑川町(滑川総合)
 寄居町(寄居城北)
 小鹿野町(小鹿野)
 松伏町(松伏)
 宮代町(宮代)

 現状、募集面で安泰と言えるのは伊奈町の伊奈学園。
 それ以外の小川、滑川総合、寄居城北、小鹿野、松伏、宮代は、いずれも定員に達せず欠員募集を実施した。
 これらが次の統廃合対象というわけではないが、存続のために何かやるとしたら、それは今である。
 方針が出されてから作文提出したって意味はない。

 今回は触れられなかったが、市に公立高校が一つというケースもある。
 火を消したくなかったら、やることが作文提出じゃないのは一緒。