本ブログの主たる読者である学校や塾の先生方に、今さら「勉強とは?」などと語る意味があるか。
 と、思いながら書く。

◆私の周りは若い人だらけ
 若い人と一緒に仕事をすることが増えた。
 たまには仕事だけでなく生き方について相談されることもある。
 昔はそんなことなかったのに、なぜここに来て増えたのか。

 不思議に思って考えてみたが、答えは実に単純だった。
 自分が年をとったからだ。
 同世代や上の世代が次々にフェードアウトしてしまった。
 (人生からでなく、ビジネスの世界からである)
 結果、周囲は皆、自分より若い人になってしまった。
 ただ、それだけのこと。
 
 もしかして自分は若者たちに慕われているのか。
 などと都合の良い想像をしてみたが、そんな馬鹿な。
 年を取って仕事を続けていれば、周りは必然的に自分より若い人ばかりになる。

 で、ここまでプロローグ

◆勉強の仕方が分からない
 年寄りの常で若い人に説教を垂れる。 
 ビジネスの世界で勝ち抜いて行くためには、人に負けない知識と技術が必要だ。
 だから、勉強したほうがいいよ。
 30歳になっても40歳になっても、その先も、ずっと勉強だ。

 「はい、分かりました」
 と、返事はよろしい。
 だが、何か月経っても一向に勉強を始める気配がない。
 仕方ない。もう一度言おう。
 勉強しなさい。

 すると小さな声で「あの~、何をやったらいいか分からないんです」。
 
 はっ?
 だって高校も出て、大学も出てるんだろう。
 一流とまでは行かないまでも、そこそこの学歴じゃないか。
 なのに勉強の仕方が分からんのか。
 小中高大学と12年間も学校通って勉強の仕方が分からない。
 高い学費を払って、一体何をやってきたのだ。

◆「それ以上」「それ以外」の勉強をしたことがあるか
 キミは中高生や大学生の時、学校の授業や教科書以上の勉強したことあるか。
 例えば、国語の授業で「三四郎」をやったとする。
 教科書に出てくるのは一部だ。
 そこで文庫本を買って全文を読んでみる。
 さらには「それから」とか「門」とかも読んでみる。
 むろん興味を持ったらということでいいが、その手の経験はあるか。

 理科でも社会でも数学でも英語でも教科は何でもいい。
 「教科書以上」「教科書以外」の勉強をしたことがあるか。
 つまりはテストに出ない勉強だ。
 成績や入試とは関係ない勉強だ。
 言い換えれば、やってもやらなくてもどっちでもいい勉強だ。
 そういう経験はあるのか。

 「ありません」
 だろうな。
 が、それにしても惜しいことをした。
 勉強には二通りあるんだ。
 一つはテストや入試で良い点を取るための勉強。
 そして、もう一つは今言った「それ以上」「それ以外」の勉強だ。

◆大人になって差がつくのはどっち
 テストや入試で良い点を取るための勉強をここでは「点取り用勉強」と呼ぶことにしよう。
 これは決して軽んじてはいけない。
 このことは声を大にして言っておこう。
 ただし、これは上限が決まっている。
 その内容は授業や教科書を超えることはない。

 ゴールが決まっている競走のようなものだから、早く始めて早く終わらせればいい。
 で、一応この競走の勝者には「勉強が出来る人」の称号が与えられる。

 がしかし、「点取り用勉強」の勝者がそのまま大人になり社会に出て、ずっと勝者であり続けられるか、だ。
 たぶん無理だろう。
 みんなが同じ教科書で同じ内容を学んでいるのだ。
 同じことをやっているのに差がつくはずがないだろう。
 
 「点取り用勉強」と違って「それ以上」「それ以外」の勉強には上限がない。
 ゴールはないのでどこまでやってもいい。
 何をやってもいい。
 ということはここに個性が出る。

 言ってなかったが、勉強にも個性が出るんだ。
 この個性は他人とかぶることが少ない。
 簡単に真似されることもない。
 それに比べりゃ、服装や髪型の個性なんて屁みたいなものだ。

 本当に勉強が出来る人は、「点取り用勉強」の傍らで「それ以上」「それ以外」の勉強をやっている。
 ただ、テストや入試で試されることがないので、他人からは分からない。

 ところが、大人になり社会に出ると、「点取り用勉強」の価値は徐々に下がって行き、「それ以上」「それ以外」の勉強の価値が高まって来る。
 いい大学を出たのに使えないヤツって聞いたことあるだろう。
 実際にいるんだ。
 そういう連中は「それ以上」「それ以外」の勉強を怠って来たのだ。
 そのことに気づいてから始めても十分挽回は可能だが、自分は勝者だと勘違いしているから、それが出来ない。

◆だれも教えてくれない「それ以上」「それ以外」
 「点取り用勉強」は、そのやり方を教えてくれる人がいる。
 だから、その通りやれば成功する。

 だが、「それ以上」「それ以外」の勉強については、それが何であるかを教えてくれる人がいない。
 本人の好みの問題だし、個性の問題であるから、これをやれ、あれをやれと示すことができないのだ。
 自分で決めるしかない。

 こういう習慣というか思考は、できれば小さい時から身に付けたい。
 小学校の夏休みの自由研究などは本来、ここに狙いがあるのだろう。
 総合的な学習とか探究なども、「それ以上」「それ以外」の訓練の場になる可能性がある。

 と、そんなわけで、「それ以上」「それ以外」を完全にスルーした形で今日に至っている30代、40代にどうやって勉強に励んでもらうか。
 悩みがつきない日々である。