生徒募集担当者向けの記事である。
 本ブログでは記事ごとにカテゴリー分けをしている。
 その中に「生徒募集」というカテゴリーがあるのだが、記事本数はこれがもっとも多い。

 今日のテーマは「エリア戦略」である。
 平たく言えば、確実な募集を続けるためには、まず地元を押さえよという話だ。

 うちの学校は県外からも生徒が来る。
 うちの学校は市外(町外)からも生徒が来る。

 まあ、そうだろう。
 が、だとしても募集の基本はあくまでも地元である。

 埼玉県には市内(町内)に1校という公立高校がいくつかある。
 ここでは、全日制普通科の場合で考える。

 伊奈学園(伊奈町)
 小川(小川町)
 越生(越生町)
 北本(北本市)
 志木(志木市)
 白岡(白岡市)
 杉戸(杉戸町)
 鶴ヶ島清風(鶴ヶ島市)
 蓮田松韻(蓮田市)
 飯能(飯能市)
 日高(日高市)
 富士見(富士見市)
 ふじみ野(ふじみ野市)
 不動岡(加須市)
 本庄(本庄市)
 松伏(松伏町)
 宮代(宮代町)

 伊奈町には栄北・国際学院、越生町には武蔵越生、志木市には細田学園、杉戸町には昌平、飯能市には聖望学園、加須市には花咲徳栄・開智未来、本庄市には本庄東・本庄第一といった形でそれぞれ人気の私立高校があるわけだが、それ以外は市や町でただ一つの高校ということになる。
 今回は太字で示した10校がただ一つの学校となるので、それらについて考えてみる。

 市や町に唯一、つまり競合がないということは、基本的には有利な立場である。
 もちろん現実的には、隣接市町村や近隣市町村も含め、地元の概念をもう少し広く取るべきだが、今回は話を単純化するために、学校の所在地の市や町のみを地元と考える。

 次に、地元中学校の在籍者との関係を見てみる。
 (令和4年度学校基本調査による中学2年生在籍者)

 たとえば小川(小川町)の場合、200人募集であるが、地元中学校在籍者は170人である。仮に町内の全員が入学しても定員を満たすことはできない。
 また、宮代(宮代町)の場合、200人募集であるが、地元中学校在籍者は204人であるから、町内のほぼ全員が入学してようやく定員を満たすことができる。
 
 他の学校も見てみよう。
 北本    定員160人 市内499人
 白岡    定員160人 市内428人
 鶴ヶ島清風 定員200人 市内560人
 蓮田松韻  定員200人 市内508人
 日高    定員160人 市内524人
 富士見   定員200人 市内864人
 ふじみ野  定員120人 市内922人
 松伏    定員160人 市内268人
 
 ふじみ野はスポーツサイエンス科、松伏は音楽科を除いた普通科のみの定員を示している。
 
 上記8校は、市内(町内)の全員が入学すれば定員を満たすことは可能だ。
 もちろん学力レベルの問題もあるわけだから現実的には起こり得ないが、計算上はそうなる。

 もう少し具体的な数字を示そう。
 市内生の何パーセントが入学すれば定員を満たせるかという想像上の数字だ。

 ふじみ野  13.0%
 富士見   23.1%
 日高    30.5%
 北本    32.1%
 鶴ヶ島清風 35.7%
 白岡    37.4%
 蓮田松韻  39.4%
 松伏    59.7%

 市内生の10~20%をまとめれば、それだけで定員を満たせるふじみ野や富士見は有利な立場だ。にもかかわらず、ふじみ野は定員ぎりぎりだし、富士見は定員を割っている。両校は地元を固めきれていない可能性がある。

 日高、北本、鶴ヶ島清風、白岡、蓮田松韻は市内生の30~40%をまとめれば、それだけで定員を満たせる。決して高いとは言えないハードルと思えるが、北本、白岡、蓮田松韻は定員を割っている。これら3校も地元を固めきれていない可能性が高い。

 実際には入学者が市内生(町内生)のみということはありえず、隣接・近隣からの入学者があるだろう。私立との関係もある。そして、前述したように学力の問題もあるから、市内(町内)の全生徒が入学見込みの対象になるわけではない。

 その上で言うが、やはり募集に苦しむ学校は地元を固めきれていない。
 今回は、市内(町内)で唯一というポジションにある学校だけを取り上げたが、条件が異なっても基本は同じだ。
 選挙でも地元を固めた候補者が勝ち。商店でも地元の常連を固めた店が勝ち。

 戦線を拡大する前に、地元での勝ち負けをしっかり分析してみようということだ。