専門高校関係の記事が続く。
「よみうり進学メディア(埼玉版)」6月号の取材で専門高校を訪ねている。
今日の訪問校は狭山工業高校だ。
◆人気校から統廃合対象へ
創立は昭和37年(1962年)だ。
当時、いくつもの工業高校が作られた。
昭和36年 浦和工業
昭和37年 狭山工業
昭和38年 久喜工業
昭和39年 春日部工業
昭和41年 熊谷工業
何と6年間で5校。
明治創立の川越工業、大正創立の大宮工業、昭和戦前創立の川口工業と、3校しかなかった工業高校が一気に8校に増えた。
世は正に高度経済成長の真っただ中であり、産業界を支える大量の若手人材が求められていたのである。
このころの工業高校は、底辺校でもなければ、普通科が無理だからと仕方なく行くところでもなかった。
エリート。
とまで言ったら言い過ぎだが、人気校ではあった。
その後の推移と現状は皆さんご存知のとおりなので、詳しく語ることはしない。
各校各科ともに恒常的な定員割れとなっており、今や統廃合のターゲットとなっている。
すでに大宮工業と浦和工業の統合が決まっており、さらに統廃合が進む可能性もある。
◆川越と所沢の中間
同校は、西武新宿線「狭山市駅」から徒歩15分と、なかなかの好立地だ。
西部地区の地理に疎い方のために、西武新宿線の駅を一部紹介しておこう。
本川越(始点・終点)
↓
南大塚
↓
新狭山
↓
狭山市
↓
入曽
↓
新所沢
↓
航空公園
↓
所沢
↓
以下省略
大ざっぱな言い方をすれば、狭山は川越と所沢の間。
狭山工業は川越からも所沢からも通える学校ということになる。
なお、「本川越」を最寄り駅としているのが川越工業、「南大塚」を最寄り駅としているのが川越南である。
◆工業高校って、何を勉強するの
学校名に「工業」を冠する学校は県内に8校ある。
(三郷工業技術を含めれば9校)
これら8校にすべて置かれているのが「電気科」と「機械科」である。
狭山工業の場合、これに「電子機械科」を加えた3学科構成となっている。
なお、「電子機械科」を持つ学校には、大宮工業・児玉・三郷工業技術・越谷総合技術・新座総合技術がある。
工業高校の一番の悩みは、何を学んでいるのかが分からないことである。
中学校の先生も説明できない。
塾の先生も説明できない。
中学校にも塾にも工業高校出身の先生がいないからだ。
ここが工業高校の大きなハンデと言える。
他の専門学科も同様だ。
生徒の具体的な相談に乗ってやれない。
◆今年度、広報部を新設
こうした問題を少しでも改善しようと、狭山工業では今年度、新たな組織として広報部を立ち上げた。
今日の訪問では、運よく広報部担当の先生にお会いすることができた。
まだ手探りの状態ということであるが、HPやインスタグラムでの定期的な情報発信を始めている。
まずは学校の存在を知ってもらうこと。
これはすべての学校に言えることだが、自分たちが思っている以上に、世の中にはその存在は知られていないのだ。
広報活動はここを出発点にしないと間違える可能性が高い。
この学校は昨年、「狭紅茶」の開発がマスコミで大きく取り上げられた。
「狭紅茶」世界への道ー狭山工業高校が開発
狭山工業高校開発「狭紅茶」が奨励賞受賞
工業高校が紅茶の開発って、ナゼ?
この、ある種の意外性がNHKをはじめマスコミを動かした。
農業高校がこれをやっても、そこまで興味を示さない。
学校で広報を担当される先生方は、こうしたマスコミの習性を知っておくとよい。
なお、今日の取材の中で同校・児玉佳也校長は、近々マスコミにリリースする面白いネタがあると教えてくれた。
ただ、オフレコというやつなので、ここで紹介することはできない。
その内容は、まだ生徒たちにも伝えていないとのことだ。
◆知られていないのは存在しないのと同じ
広告や広報の世界ではよく、「知られていないのは、存在していないのと同じ」などと言われる。
要するに知名度である。
知名度を上げただけで、ただちに募集状況が改善されるわけではないが、「はじめの一歩」であるのは確かだ。
それには自ら情報発信を行うのはもちろんだが、マスコミを利用した話題作りも必要だ。
狭山工業は、令和5年度入試で3学科とも定員を割っており、定員充足率は約75%だ。
知名度向上がうまく行けば、定員充足率80~90%あたりまでは行けるだろう。
あとは、可能であれば、「電気」とか「機械」といった昭和チックな学科名も変えられるといい。
愛知県や東京都は、すべての「工業高校」を「工科高校」に改称した。
名前だけ変えたって、と言うなかれ。
県内工業系学校すべてを見に行った私の見立てでは、教える中身や教え方は時代に合わせて変わっている。
そうしないと企業に送り込めない。
むしろ変わっていないのは中身より外身なのだ。
工業高校では実習の際は作業服に着替える。
これも、もっとかっこよくしてもいい。
ワークマンと共同開発して、若者向きの斬新なやつを作ったらどうだ。
私は年寄りながら、ランニングしたり山に登ったりしているが、この分野でのワークマンの躍進には目を見張るものがある。
機能は確かだがデザインがダサいというのが、作業服大手ワークマンの弱点だったが、いまや「ワークマンプラス」の店舗には若者や女性客があふれておるぞ。
と、やや横道にそれた。
さて、今日の訪問取材を元に、中学生向け記事をどう書くか。
とりあえず、明日、明後日の取材を終えてから考えよう。
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