一昨日、50代で教員採用試験を受け、合格した人の話をした。
 埼玉県教員採用試験、セカンドキャリア特別選考を生かすには(10月1日付)

 この記事を読んで、だったら自分もトライしてみよう。
 中にはそう思った方もいるかもしれない。
 そこで今日は、そういう方に向けて記事を書いてみようと思う。

 塾業界から学校業界に転じる例はこれまでにもあった。
 多くは20代、30代での転職と思われる。
 しかし、今日取り上げるのは、そういう方たちではなく、もうちょっと年の行った40代、50代で、いわゆる個人塾を経営されている方の場合だ。

 少子化が急ピッチで進み、年を追うごとに子供の数が減って行く。
 あと10年もすると去年生まれた80万人世代が中学受験準備期に入る。15年先には高校受験期に入る。
 塾長の皆さんが創業された時期の半分だ。
 そして、この状況がずっと続く。

 それでも自分は生涯塾長を続けるのだという方は、そうされたらよい。
 生き方は人それぞれだ。
 他人がとやかく言う話ではない。

 だが、人生100年時代と言われる今日、後半戦は別の職業、別の生き方をしてみようと考えている塾長さんにとって、学校業界は一つの選択肢になり得ると思う。

◆塾と学校は異なる世界
 塾の先生は、自分も学校の先生と同じ教育界にいると勘違いしてしまうことが多い。
 塾と学校とは「似て非なる世界」である。
 実際のところ、塾で鍛えた腕前は、学校においても随所で発揮されるのだが、そもそも塾と学校では目標とするものが違う。
 塾長であれば、塾という企業体の利潤極大化を目指して行動するだろう。
 しかし、非営利である学校はこの原理に基づいて行動しているわけではない。
 私立と言えども非営利である。

 塾で通用したから学校でも通用するだろうと思わないことだ。
 この謙虚さが大事。

 ラーメン屋やケーキ屋や花屋だったら、自分は素人と自覚するしかないが、似た部分があるものだから、つい素人の自覚を忘れてしまう。
 学校の先生方はおそらく私と似た感覚だろうし、中には塾を敵視している人もいるくらいだから、「塾での経験を活かしたい」などと面接で言おうものなら一発でアウトだ。
 経験があると錯覚している人よりも、経験がないが頑張るという人が欲しい。
 これが採用というものだ。

◆ブラックなら慣れっこ
 近年学校はブラック職場のレッテルを貼られている。
 そう言われても仕方ない部分があるのも事実で、これは改善されなければならない。
 
 だが、私もそうだが、零細企業経営者の職場は、黒より黒い漆黒の世界である。
 一度自分の残業相当時間を計算してみるといい。
 世にいう過労死ラインが羨ましく見えるだろう。

 塾業界から学校業界に転じることができれば、世間がブラックと言おうが、自分にはグレーか、ことによったらホワイトに見えることだろう。

 働く時間はともかくとして、給料の心配をしなくていいのが何よりだ。
 今月講師に給料払えるかな、自分の給料とれるかなと不安におののく必要がない。
 毎月、決まった日に決まった額の給料がもらえる。
 雇用も65歳まで保証されるし、もっと延びる可能性だってある。

◆組織で働くことに耐えられるか
 長年個人で経営していた人間が、組織で動く学校社会になじめるかどうかという問題は大きい。
 いわゆる一般企業(それも大企業)からの転職であれば、その心配はない。

 だが、良くも悪くも自分の好きなようにやってきた塾長が、法や規則に縛られた世界になじめるか。
 また、何をやるにも同僚や上司・部下などとの共同作業となる世界でうまくやっていけるか。
 これは案外高いハードルになりそうだ。
 まあ、このあたりは身分保障、生活保障とのバーターということになろう。

◆試験対策はお手のもの
 採用試験は一般常識、専門科目試験、論文、面接などである。
 これらの対策は、いつも塾生相手にああしろこうしろと言っていることを自分で実践するだけだ。
 試験に受かる方法を教えている人間が、自分で出来なくてどうするという話だ。
 塾長経験が一番生きるとしたら、ここだろう。

 私は、非正規採用サラリーマン、公務員(教員)、正規採用サラリーマン(3社)、会社経営(数社)と、落ち着かない人生を送ってきたので、その分転職には詳しい。
 いつでも相談に乗るよ。