「よみうり進学メディア11月号(埼玉版)」の取材で武南高校を訪問した。
 下車駅はJR京浜東北線「西川口駅」であるが、所在地は蕨市塚越という所だ。
 駅東口から徒歩10分と恵まれた立地だ。

 県内には、周りに田園地帯が広がる学校が多いが、ここは住宅街。
 その分、校地がやや狭いという難点がある。
 また、近隣住民からの苦情も多い。と、学校は言っていなかったが、「生徒の声がうるさい」とか「登下校の態度が悪い」とかいろいろなクレームが寄せられるだろう。
 住宅地のど真ん中に学校を作ったのではなく、学校の周りに住宅ができたのだが、それでも文句を言ってくる人はいる。都市型学校の宿命だ。

 さて、今日の目的は授業取材である。
 授業を丸ごと1時間見学して、その様子をレポートする。
 中学生向け記事は11月10日発行の「よみうり進学メディア埼玉版」に掲載される。

◆秒速で雰囲気を一変させる
 見学したのは教員8年目、土田晃大教諭による3年生「英語表現」の授業だ。
 何度か書いたと思うが、授業見学の際は、原則として休み時間中に教室に向かうことにしている。
 チャイムが鳴り、起立・礼。
 そして先生の第一声。

 ここから生徒を休み時間モードから授業集中モードに切り替えて行くわけだが、この数分間にその先生の力量がよく現われる。
 なので、授業見学の際は、ここを見逃してはいけない。
 専門用語で「導入」などと言うが、これが下手くそな先生は最後まで下手くそだ。

 どのような形で入り、どう展開して行くかは、あらかじめシナリオを描いて臨むが、生徒たちの様子はその日その日で異なる。
 明るく元気な時もあれば、どんより曇っている時もある。
 この雰囲気を瞬時に読み取り、臨機応変シナリオを修正して行かなければならない。

 今日の場合で言えば、取材が入るということで、生徒たちもいささか緊張気味に見えた。
 日頃授業参観は経験しているはずだが、カメラを持った人間が休み時間中から教室内をうろついていたり、校長先生や教頭先生も様子を見にやってきたりしているわけだから、「どうも、いつもと様子が違うな」、という雰囲気が教室内に漂っていた。

 だが、教員8年目ともなれば、その程度で動揺したりはしない。
 さしあたり授業とは直接関係しない他愛のないやり取りを繰り返しながら、あっという間に授業集中モードに転換させてみせた。
 ものの数分、いや1分と経っていないかもしれない。
 秒速の離れ業である。

 私はこの瞬間、これはいい授業になるなと確信したわけである。
 もちろん、その後の展開は予想した通りだった。

 途中から机を寄せてのグループ学習に移行したが、特に、生徒同士話し合わせる時間の長さ、問題に取り組ませる時間の長さなどが絶妙だと感じた。
 短すぎても生徒のやる気を削ぐ。長過ぎると飽きる。
 ちょうど良い長さというのが、なかなか難しいのだが、私の見る限り時間管理はほぼパーフェクトだった。
 場面転換のタイミングがちょっとずつズレるような授業は、取材する側としてもストレスがたまるのだが、今回はおかげで50分があっという間だった。

 そうそう。
 今回の企画をアレンジしてくれた広報担当の武田先生が、バスケットボール部顧問としての土田先生もアピールして欲しいと仰っていた。
 武南高校男子バスケットボール部は直近の大会である全国選手権大会(ウィンターカップ)埼玉県予選では県ベスト16まで進出した。
 なるほど。あの授業中の声のデカさと、机間巡視する際のキレのあるフットワークは体育館で鍛えられたものだったか。
 関東大会が見えるぐらい強くなったら、今度は部活で取材するよ。

 授業のごく一部をご紹介。
 時間の関係でノー編集、撮って出し。1分13秒。
 雰囲気だけでも伝われば・・・