一昨日の消滅危機の町についての記事はそれなりに読まれているようだ。
 検索からの流入が非常に多い。
 しかし、今日の記事は検索からの流入はないと予想している。
 埼玉県内の高校の先生、塾の先生に特化した話題だからである。

 これから書くことは、「まちが衰退すれば高校が衰退し、高校が衰退すればまちの衰退はさらに加速する」という話である。

 埼玉県には63の市町村があるが、今のところそのうち50市町(79.4%)に高校(私立含む)がある。
 以前はあったが今はないまちもあれば、統廃合によりこれからなくなるまちもある。
 
 高校がないまちは、これから子育てしようという若い世代の選択肢からはずれる可能性が高く、衰退が加速する。
 田舎暮らしを求めて高齢世代が移住してくることはあるが、これでは残念だが次の世代につながらない。
 だから、まちから高校がなくなると衰退がさらに加速する。

 小中学校と異なり、高校は全県一区であり、私立であれば県外からの入学も期待できるから、地元のまちの衰退が高校に及ぼす影響はないと考える人もいるだろう。
 それはある程度あたっている。
 地元がだめなら外に打って出ればいい。

 ただ、各校生徒の通学所要時間を可能な限り調べてみると、「30分~1時間以内」が多く、次いで「30分以内」「1時間~1時間半」となっている。
 つまり、なんだかんだで自宅から近い地元ないしは近隣の学校が選ばれているのである。
 選択動機に「家から近いから」「通学が便利だから」を挙げる生徒も多いだろう。
 したがって、よって立つまち及び周辺の衰退は関係ないとは言いきれないのである。

 今回、独自に資料を作成してみた。
 元々の数字は埼玉県が発表している人口統計である。

◆県内でもっとも若いまちは?
 人口を大きく三つのカテゴリーに分ける考え方がある。

 ▽年少人口(0~14歳)
 ▽生産年齢人口(15~65歳)
 ▽老年人口(65歳以上)

 年少人口の割合が高いまちは活力がある。
 まちを歩いていてもベビーカーを押す若いお母さんの姿をたくさん見かける。

 老年人口の割合が高いまちは活力に乏しい。
 まちを歩いているとシルバーカー(老人用手押し車)を押すお年寄りの姿をたくさん見かける。
 と言うか、そもそも昼間は人の気配すらない。

 ベビーカーが多いかシルバーカーが多いか。
 これがそのまま「若いまち」と「年老いたまち」の見分け方となる。

 さてそこで。
 今回は、年少人口割合と老年人口割合の相関を表にまとめてみた。
 基本的には年少人口割合が高ければ老年人口割合は低く、年少人口割合が低ければ老年人口割合は高いという関係になりそうだ。

 年少人口割合は、「12%以上」「10~11.9%」「10%未満」の三区分にしてみた。
 老年人口割合は、「25%未満」、「25~29.9%」「30~34.9%」「35%以上」の四区分にしてみた。
 出来上がったのが下の表だ。

 表の水色の部分が年少人口割合が12%以上であり、かつ老年人口割合が25%未満のまち、つまり「若いまち」である。

 先の調査で「自立持続可能性自治体」とされた滑川町が年少割合がもっとも高い。
 ただし人口2万人の小さな町である。
 そう考えると戸田市の年少割合13.9%、老年割合16.6%というのは、かまり突出した数字と言えるのではないか。
 別格はさいたま市だ。年少割合12.8%、老年割合23.2%だが総人口がケタ違いであるから実人数では他のどのまちより多い。

 以下、まちごとの具体的数字を年少割合順に示すと次のようになる。
 カッコ内は人口。左が年少割合、右が老年割合である。

 滑川町(2.0万)15.3% 22.9%
 戸田市(14.2万)13.9% 16.6%
 吉川市(7.2万)13.6% 24.2%
 朝霞市(14.3万)13.3% 19.5%
 和光市(8.5万)13.0% 18.1%
 さいたま市(134.6万)12.8% 23.2%
 伊奈町(4.5万)12.8% 24.1%
 志木市(7.5万)12.8% 24.8%
 富士見市(11.3万)12.2% 24.2%
 八潮市(9.4万)12.1% 22.7%
 
 というわけで、「埼玉県もっとも若いまちグランプリ」があるとすれば、栄冠は戸田市に輝くだろう。
 別格のさいたま市は特別賞、滑川町は新人賞といったところだ。

 これらのまちに立地する高校は、大きなアドバンテージがある。
 もちろん、生徒募集においては学校の性格、学科構成、学力レベル等さまざまな要素を考えなければならないが、戦略を誤らなければ持続可能性が高い。

 以上と正反対なのが、年少割合10%未満かつ老年人口35%以上の「年老いたまち」であるが、それも含め次回に書こうと思う。
 2日で終るか、3日かかるか。
 いずれにせよまた明日。

 なお、言い忘れたが元になった統計は2023年12月のものであるから、遠い30年先ではなく、明日の話である。