ビジネスの世界で使われている言葉に「機会損失」がある。
 本来得られるはずだった利益獲得の機会を逃してしまうことで、簡単に言えば「儲け損ない」である。
 非営利である学校の場合、そもそも利益とか利潤という考え方はないので、あまり使われることがない。

 しかしここで、やや強引にこの言葉を生徒募集に当てはめてみようと思う。
 たとえば、学校説明会。
 会場のキャパや動員できるスタッフ(教員)の数を考えると、1回の受け入れ人数を制限せざるを得ない。
 そこで各校とも定員を設け、先着順あるいは抽選といった形で参加人数を絞らなければならない。
 ここまではいい。
 というか、仕方がない。

 だが、ここで考えておかなければならないのは、申込のタイミングが遅れた受験生や、抽選に漏れた受験生に対し、説明の機会を逃してしまったということだ。
 (受験生側からすれば、説明を聞く機会を逃したことになる)

 もし説明を聞いてもらえれば、あるいは実際に学校を見てもらえれば、志願し受験し入学してくれたかもしれないのだから、いくらキャパの問題があるとは言え、これはもったいない。
 多くの受験生は次の機会を待つだろうが、そこでもまた申し込み手続きの遅れや抽選漏れという事態になるかもしれず、学校側はまたもや説明の機会を逃すかもしれない。
 そして、そうこうするうちに、別の学校の説明会に参加し、そちらに気持ちが動いてしまうかもしれない。

 このように、主として学校側の都合により説明の機会を逸し、受験生が離れてしまうことを、ここでは「機会損失」と考えてみることにする。

 「機会損失」を減らすには、どのような手立てが考えられるか。
 最初に言ったように、会場キャパやスタッフ動員の面から、定員制、先着順、抽選制といった形をとるのはやむを得ない。
 その上で。
1 元々の説明会の回数を増やす
2 午前の部、午後の部の2回制にするなどして受け入れ人数を増やす
 などが考えられる。

 それでも受け入れ不能となった場合は、
3 追加あるいは臨時の説明会を設ける
 これには先生方や、部活の理解や協力が必要となるだろう。
 校内コンセンサスを得られなければ、「機会損失」を受け入れるほかはない。
 受験生に対し、等しく説明を機会を提供するのは、特に公立においては重要であると考えるが、それよりも在校生の指導や教員の働き方改革、あるいはコンプライアンスを優先すべきという考え方もあるだろう。どう折り合いをつけるかは各校でお考えいただくしかない。

 仮に追加あるいは臨時の説明会を実施するのであれば、本来予定されていた説明会から、できるだけ間をおかないほうがいいだろう。
 先着順や抽選に漏れた受験生は、場合によってはその学校からノーを突きつけられた気分になるかもしれない。それによって気持ちが離れてしまうかもしれない。
 そうならないためには、すぐに手を打ったほうがいい。
 また、先着順や抽選に漏れた受験生には、優先権を与えるのもいい。
 これにより「機会損失」を最小限に食い止めることができる。

 ホームページなどでは、「受付を締め切りました」「定員に達しました」「抽選に漏れました」といった紋切り型ではなく、受験生の気持ちが離れて行かないよう事情を丁寧に説明する必要がある。

 個人的には、学校側の「機会損失」云々はともかくとして、申込のタイミングが遅れたり、抽選に当たらなかったりという理由で、その学校の説明を聞いたり見に行ったりができないという事態は避けなければならないと考えている。