埼玉県教育委員会は7月11日、県立高校男女別学校の共学化についてのアンケート結果を公表した。
 調査は4月17日から5月17日までにWEB上で行われた。
 対象は県内在住在学の中学生・高校生及びその保護者である。

 アンケート結果の詳細は県教委ホームページ見ることができる。
 ↓
 「埼玉県立の男女別学校に関するアンケート結果」(埼玉県教育委員会)

◆マスコミ報道
 新聞・テレビ等は次のように報じている。

「埼玉県立高校共学化アンケート 中学生と高校生で捉え方に違い」(NHK首都圏ニュース)

「埼玉の別学校共学化アンケート 中学生は賛否拮抗、高校生は別学支持」(朝日新聞)

「埼玉県立高校の共学化論争、中学生の56%が「どちらでもよい」…高校生は別学維持が過半数」(讀賣新聞オンライン)

「男女共学化…高校生6割が反対、中学生6割は「共学へ行きたい」 埼玉県教委アンケート 意識の違い浮き彫り」(埼玉新聞)

 後述するが、「県立の男女別学校12校の在り方について」で「共学化したほうがよい」「共学化しないほうがよい」「どちらでもよい」「わからない」の四択で尋ねている。
 これに対し、高校生は57.2%が「共学化しないほうがいい」を選んでいる。
 その意味で「高校生は別学支持」(朝日)、「高校生は別学維持が過半数」(讀賣)、「高校生6割が反対」(埼玉)の各見出しはそのとおりだ。

 また、同じ質問に対して、中学生は56.2%が「どちらでもよい」を選び、「共学化したほうがよい」と「共学化しないほうがよい」は共に19%前後だった。
 共学化について明確な意志を示した高校生と、「どちらでもよい」と答えた中学生。
 その意味で、「中学生と高校生で捉え方に違い」(NHK)、「中学生は賛否拮抗」(朝日)、「意識の違い浮き彫り」(埼玉)の見出しもその通りだろう。
 
 やや意味不明なのは埼玉新聞で、「高校生6割が反対」「中学生6割は『共学へ行きたい』」と、別の質問項目における割合を並べた上で「意識の違い浮き彫り」としている。
 たぶん6割という数字を並べたかったのだろう。
 
◆結果の概要
 アンケートは当初、無記名で行われたが、重複回答や対象者以外からの回答など不正への懸念があるとの指摘があり、開始2日目に記名式に変更された。
 記名式アンケートには7万471件の回答があった。
 このうち姓名未入力等の不備があるものを除き、6万4829件を集計した。
 中学生    2万4343件
 高校生      7286件
 中学生保護者 1万5790件
 高校生保護者 1万7410件

 詳しくは県教委のデータをご覧いただくとして、「県立の男女別学校12校の在り方について選んでください」の問いに対する結果だけ見ておこう。
●中学生

●高校生

●中学生保護者

●高校生保護者

 集計結果の最後の方に、最初の1日で集まった「無記名」分の結果も出ている。
 それによると、「共学化しないほうがよい」の割合は、高校生と高校生保護者においては「記名分」との差はあまりないが、中学生と中学生保護者においては「記名分」との差が大きい。
 特に中学生にあっては「共学化しないほうがよい」が60%を超えており、「記名分」の19.3%と大きく異なっている。

◆生徒募集担当者の視点
 アンケート結果で政策決定するわけではないだろうが、これを見る限り現状での共学化推進は難しそうだ。
 で、その話はひとまず措いて、生徒募集担当者であれば関心を持たざるを得ないだろうと考えられる質問と回答もあるので、一つ紹介しておこう。

 質問「次のうちどの高校へ進学したいですか。現時点の考えを教えてください」
 回答
「男女共学校」 56.3%
「男子校」    3.5%
「女子校」    3.4%
「どれでもよい」25.7%
それ以外の回答 11.1%

 この関連で、「男女共学」「男子校」「女子校」「どれでもよい」を選んだ人を対象に理由を聞いている。
 質問「回答を選んだ理由を選んでください。(三つまで選択可能)」
 回答
「部活や学校行事にみりょくがあるから」18.6%
「自分の学力に合っているから」17.1%
「男女共学校であるから」13.8%
「学校の伝統や学校のふんいきにみりょくがあるから」9.6%
「通学が便利だから」9.4%
「自分が望む進学や就職などの実績があるから」8.4%
「自分が学びたい学科があるから」8.1%

 ここまでは、これから選ぶ中学生の回答。

 では、すでに選んで在学中の高校生はどのように答えているか。
 質問「現在の在学校を選んだ理由を選んでください。(三つまで選択可能)」
 回答
「自分の学力に合っているから」28.6%
「部活や学校行事に魅力があるから」16.5%
「通学が便利だから」14.3%
「学校の伝統や校風に魅力があるから」11.5%
「自分が望む進学や就職の実績があるから」8.2%
「男女別学校であるから」6.6%
「自分が学びたい学科があるから」5.6%
「男女共学校であるから」5.6%

 これから選ぶ中学生と、すでに選んだ高校生とでは微妙に違いがあるのが興味深い。
 仮に学力階層別に調査をしたら、選ぶ理由はそれぞれ変わってくるだろうが、全体としてはこんなところだ。
 
 公立高校の先生以外の方は、このアンケートの一時資料(元データ)の在りかを見つけにくいのではないかと思い紹介した。