埼玉県教育委員会が令和9年度公立入試について基本方針等を発表した(9月26日)。
令和9年度入試は、現在の中学1年生が対象となる入試である。
令和7年度入試 現中学3年生 従来通り
令和8年度入試 現中学2年生 一部制度変更前倒し実施あり
令和9年度入試 現中学1年生 制度変更
なお、上記方針に基づく選抜実施要項・選抜要領(暫定版)については来月(10月)発表予定である。
このブログの読者は学校や塾の先生方と想定しているので、プロの皆さん相手にここで細かい解説をする必要はないだろう。
私の視点は広報及び生徒募集戦略である。
◆塾にとっては大きなビジネスチャンス
制度変更は塾にとってビジネスチャンスとなるだろう。
受験生・保護者はどんな些細な変更でも不安なのだが、久しぶりの大型変更となればなおさらだ。
その不安に応えるべく、いち早く「分かりやすい解説」を自塾サイト、YouTube動画、各種SNSなどで発信すべきだろう。
ただ、いたずらに不安を煽ってはいけない(そんなことはしないと思うが)。
どんな変更であろうが我が塾の対応対策は盤石と、いつも通りアピールすればいい。
年明けの新入塾生募集や春期講習生募集にあたり、新制度説明会や新制度対策講習・講座などを実施する塾も出てくるかもしれない。
◆私立高校はどう迎え撃つ
公立の入試制度変更は当然ながら私立にとっても無関係とは言えない。
我々のような立場の者も、来年再来年は公立の新制度について話題にすることが多くなるだろう。
いや、「だろう」ではなく必ず話題にする。
すると、相対的に私立の話題が少なくなる。
新制度は以前に比べ、複雑化したように見えるが、それほどでもない。しかし、受験生・保護者からは複雑に見える。
一般に、受験界においては複雑な入試は嫌われる。
そこで威力を発揮するのが、模試偏差値で事実上の合格が決まるという「必殺カード」である。
ただでさえ、私立単願希望者がじわじわと増えてきていることを考えると、今回の公立新制度が私立への流れを加速させる可能性もある。
今回の大きな変更点は、全校で面接を課すことである。
面接が合否に及ぼす影響は限定的と思われるが、それでも不安に思うのが受験生・保護者である。
私立の最近の流れは面接廃止であるが、公立本番の予行演習になるということで面接を復活する学校も現れるかもしれない。
◆公立はどう対応
これまでどおり大枠は決められている。
その中で県公立全体としては、新学習指導要領を踏まえた入試、あるいは社会変化に対応した入試は実現していると考えられる。
その上で、各校が個性化や特色化を図るということになろうが、これが行き過ぎれば志願者の減少につながりかねない。
制度全体が複雑(受験生にはそう映る)であることに加え、さらに各校が独自性を加えようとするとより複雑化する。繰り返すがそれは志願者減少の要因になりかねないので注意が必要だ。
制度変更による志願者増加は長続きしない(持続可能性が低い)。
それが効果を発揮したことが分かればすぐに追随する学校が現れ、数年後には横並びとなるからだ。
どうしても独自性にこだわるなら、「量」よりも「質」に重点を置いたほうがいい。「量の増加」ではなく「質の向上」という観点から独自性を加える。
これまで基本ワンパターンだった選抜方法が、今回の変更で3パターンとなる。
1共通選抜のみ
2共通選抜と特色選抜併用
3特色選抜のみ
傾斜配点を実施できるのは特色選抜であるから、傾斜配点を継続しようとする学校と新たに導入しようとする学校は、「2共通選抜と特色選抜の併用」か「3特色選抜のみ」の選択となる。実技実施校についても同様だ。
また、これ以外でも、共通選抜では総合点算出方法が一定の範囲に限られていることから、より設計の自由度が高い「2共通選抜と特色選抜の併用」か「3特色選抜のみ」を検討する学校が多いと考えられる。
【追記】
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