令和9年度からの埼玉県公立高校入試では調査書から「出欠の記録」が消える。
 現行の調査書様式は次のようになっている。

◆選抜資料には用いていない
 欠席日数が多いと選抜に不利という情報もあるようだが、「出欠の記録」は選抜資料として用いられていない。
 県が発表している「入学者選抜実施要領」では、調査書記載事項のうち、「学習の記録」(9教科の評定)、「特別活動等の記録」(生徒会活動、部活動など)、「その他」(資格取得など)の3項目についてははそれぞれ得点化し、選抜に用いるとしているが、「出欠の記録」については、得点化するとも選抜に用いるとも書いていない。
 つまり、合否にはまったく関係ない。
 まったく関係ないのであるから、この際、調査書から削除してしまおうというのが、令和9年度改革の考え方だ。
 令和9年度からの調査書様式は次のようになる。

 非常にシンプルだ。
 要は9教科の評定のみであり、「出欠の記録」はもとより、部活動や資格について記入する欄すらない。

◆「出欠の記録」はなぜ消える 
 「出欠の記録」が削除された背景には、不登校の生徒が増えていることへの配慮があるだろう。
 また、話題になっているヤングケアラー問題への配慮もありそうだ。
 さまざまな問題をかかえた生徒や保護者に余計な不安を与えるべきではないという考え方だ。
 近年は、皆勤賞を出すのはやめようぜという意見もあるくらいで、毎日学校に来ることが善であるという価値観も揺らいでいる。
 さらに言えば、教員の働き方改革もある。調査書の記載事項が減れば、作成する中学校の先生方の負担もその分だけ減るわけである。
 それやこれやで、公立入試においては「出欠の記録」は姿を消す。
 これが今の世の中の雰囲気というものなのである。

◆首都圏で最後まで残った埼玉県
 首都圏では、東京都と神奈川県の調査書には現状でも「出欠の記録」の欄はない。
 さらに昨年末、千葉県が令和8年度入試から「出欠の記録」欄を削除すると発表した。
令和8年度(令和7年度実施)以降の千葉県公立高等学校入学者選抜の改善点について
 「配慮の必要な生徒の心理的負担等とならないよう」、「総合的な学習の時間の記録」、「出欠の記録」、「行動の記録(第3学年)」、「総合所見」の4項目を削除するという。
 このような状況下において、埼玉県のみが残すわけにも行くまい。
 ということで令和8年度入試までは残すが、令和9年度入試からは削除することと相成った。
 
 首都圏以外でも各地でこうした動きがあるのだから、埼玉県も来年から削除で良かったのに。

◆どうする私立
 以上は公立入試の動きであるが、問題は私立だ。
 現状、出願資格に「欠席日数〇日以内」などと定めている学校が多い。
 ほとんどの学校と言っていいくらいだ。

 こうした条件を定めている私立側の事情はよく分かる。
 しかし、私立もまた広い意味で公教育を担う存在である以上、こうした公立の動きをまったく無視するわけにも行くまい。
 公立が「出欠の記録」を削除するのは、さまざまな問題をかかえる生徒への配慮であり、多忙を極める中学校の先生方への配慮である。
 私立は、こうした配慮を一切しないと言い切れるか。

 むろん、私立がすべてにおいて公立と歩調を合わせる必要はないし、むしろ可能な限り独自性を追求すべきである。
 ただ、時代の流れ、世の中の風潮・雰囲気というものがある。
 そうした中、出欠を出願資格にすることや、中学校の先生方に別途私立用の調査書作成を求めることなどについて合理的な説明ができるのかという問題も出てきそうだ。