明日の講演会は主に工業高校や工業系学科のある学校の先生方が対象だ。
 そこで今日は、その人気回復策について考える。

 工業高校の人気ばん回策を考えるとき、学科名の見直し、SNSの活用、体験入学の充実、進学実績の発信など、いくつもの方策が思い浮かぶ。どれも必要である。だが、それ以前に問われるべきことがある。
 それは、先生方ご自身が、工業高校の価値と可能性を本気で信じているかどうかということである。
 まあ、そんな人は滅多にいないと思うが、「少子化だから仕方ない」「普通科志向だから無理だ」「今の中学生には響かない」といった思いが心のどこかにあれば、どれほど立派な資料を作っても、言葉には力が宿らない。
 説明会で語る言葉、体験入学での表情、中学校訪問での一言には、学校側の本音がにじみ出るものだ。
 募集広報は、資料を配る仕事ではない。学校の未来を信じて語る仕事なのである。

 だから先生方には、まず勇気と自信を持ってほしい。
 工業高校には、胸を張って語るだけの価値がある。

◆工業高校は古い学校ではない
 工業高校は、決して過去の産業を支えるだけの学校ではない。
 機械、電気、建築、土木、情報、ロボット、環境技術。これらはすべて、これからの社会を動かす分野である。

 インフラの老朽化、災害対策、エネルギー問題、デジタル化、AI、ロボット、脱炭素、地域産業の維持。
 令和の社会課題を見れば、工業高校で学ぶ内容がいかに現代的であるかは明らかだ。むしろ、社会のほうが工業高校の学びを必要としているのだから、工業高校自身が「うちは昔ながらの学校です」という顔をしていてはならないのだ。先生方ご自身が古いイメージに縛られていないかを点検すべきである。

 旋盤も、製図も、電気工事も、建築模型も、プログラミングも、単なる実習ではない。それらは社会を支える技術への入口である。工業高校の学びは、未来とつながっている。この一点を、もっと堂々と語ってよい。

◆「就職に強い」だけでは足りない
 工業高校がしばしば口にする「就職に強い」「資格が取れる」は、事実そのとおりなのだろうが、中学生や保護者への説明としては不十分だ。
 大学進学が当たり前になり、大学院進学者も増えている時代である。保護者が「工業高校に進むと将来の選択肢が狭まるのではないか」と心配するのは当然だ。その不安に対して、「大丈夫です」「求人はたくさんあります」だけでは弱いのだ。

 これからの工業高校は、高卒就職で完結する学校ではなく、専門性を持って進学にも就職にも向かえる学校であることをもっと明確に示す必要がある。工学部、情報系、建築系、専門職大学、専門学校への進学。総合型選抜や学校推薦型選抜で評価される課題研究、資格、実習、作品、企業連携。こうした具体的な道筋を示さなければならない。
 保護者の不安に応えるだけでは不十分で、不安を希望に変えなければならないのだ。。

◆募集広報は学校の覚悟を伝える場
 体験入学、学校説明会、中学校訪問、ホームページ、SNS。
 これらは単なる広報手段ではない。工業高校が自校の価値をどう捉えているかを示す場である。

 体験入学では、作業を体験させるだけで終わってはならない。その技術がどの産業につながるのか。三年間で生徒がどう成長するのか。卒業後にどのような進路が開けるのか。そこまで語って初めて、体験は未来への入口になる。

 SNSも同じである。「楽しそうな実習風景」を載せるだけでは足りない。そこに、何を学び、何に気づき、どう成長したのかを添えるべきである。中学生や保護者は、単なるイベント写真ではなく、その学校に入った後の自分の姿を見たいのである。

 工業高校の募集広報に必要なのは、飾った言葉ではない。先生方の確信である。この学校には価値がある。この学びは社会につながっている。この生徒たちは伸びる。そう信じて語る言葉である。

 工業高校の人気ばん回は、簡単ではない。しかし、最初から「どうせ無理」と思っている学校に、未来は開けない。先生方が勇気と自信と希望を持ち、自校の価値を本気で語るとき、その言葉は必ず中学生と保護者に届く。工業高校は、まだまだ必要とされている。あとは、その価値を学校自身がどれだけ信じ、どれだけ力強く発信できるかである。

 ということで、要するにこれは講演に臨む私自身の決意である。