昨日の記事が、公開から24時間ほどで2万PVに達した。

 「同じ人気進学校でも倍率の動きが違うのはなぜか~埼玉県公立入試~」(2026年9月6日)

 普段このブログを読んでくださっている高校や塾の先生方だけでは、なかなか届かない数字である。おそらくいつもの読者層を超えて読まれたのだろう。
 この記事では、皆さんお馴染みの「倍率」という言葉を使っていない。もちろん「倍率」は学校人気のバロメーターであるわけだが、今回は別のアプローチを試みた。

 今日は、具体的な数字を示して、昨日の論を補強してみようと思う。

◆10月1日の希望者を100としてみると・・・
 埼玉県では、進路希望調査が10月1日現在と12月15日現在の2回行われる。
 その後、実際の出願があり、さらに志願先変更を経て最終的な出願者数が確定する。
 この流れを利用して、今回は第1回調査、つまり10月1日現在の希望者数を100とし、志願先変更後の最終出願者数を指数化してみた。

 便宜上、これを「志望推移指数」と呼ぶことにする。
 100なら、10月時点と最終出願時点の人数が同じ。
 90なら1割減。
 110なら1割増。

 同じ生徒を個人単位で追跡した数字ではないので、残存率や転換率という表現は適切ではない。あくまで、その学校を希望した人数が、10月から最終出願までにどう変化したかを見る指数である。
 今回は時間の関係もあり、浦和、浦和第一女子、大宮普通科、市立浦和の4校だけを調べた。
 期間は2020年度入試から2026年度入試までの7年間である。

◆4校は見事に二つに分かれた
 7年間の指数は次の通りだった。
 一番左が2026年度(令和8年度)入試、次が2025年度(令和7年度)入試の順で、一番右が2020年度(令和2年度)入試の「志望推移指数」。

▼浦和
110、98、101、98、99、104、92

▼浦和一女
113、104、113、103、116、106、107

▼大宮普通科
70、78、70、68、74、69、68

▼市立浦和
70、68、62、67、60、70、62

 7年間平均を求めると、
 浦和    100.3
 浦和一女  108.9
 大宮普通科 71.0
 市立浦和  65.6
 となる。

 かなりはっきり分かれている。
 浦和は100前後で安定している。
 浦和一女は7年間すべて100を超えている。10月時点より最終出願時点の方が毎年多い。
 これに対して、大宮普通科はすべて100を大きく下回る。市立浦和も同様である。
 大宮は10月を100とすると、最終的にはおおむね70前後。
 市立浦和はさらに低く、60台まで下がる年が多い。
 浦和・浦和一女は「安定型・固定支持型」、大宮・市立浦和は右肩下がり型」。

◆大宮、市立浦和は人気が落ちているのではない
 大宮・市立浦和は右肩下がり型で指数が低くなっているが、人気が落ちているのではない。むしろ逆である。
 この2校は、10月段階で非常に多くの希望者を集める。
 言ってみれば、まだ最終決定に至っていない上位層まで含めて、広く第一候補に入っているのである。
 その後、模試の結果、内申、他校との比較、倍率動向などを見ながら、志望者の一部が別の学校へ動く。
 それでもなお、最終的に高い人気を保っている。

 したがって、指数70や65という数字は、人気の低さではなく、むしろ「早い時期にどれだけ広く候補に入っているか」を示しているとも言える。
 10月時点で圧倒的に多くの希望者を集め、その後かなり減る。それでも最終的には高い人気を維持する。
 まあ、募集面では盤石の学校と言えるだろう。

◆浦高と一女は「志望純度」が高い
 昨日も書いたが、浦高や浦和一女のような別学校は「志望純度」が高い。
 男子校、女子校という条件は、学校選びのかなり早い段階で一つの選別を生む。
 男子校は嫌だという男子は、そもそも浦和を第一候補にしない。女子校に魅力を感じない女子も、浦和一女を選ばない。

 逆に10月1日時点で浦和、一女と答えている生徒は、進学実績や学力レベルだけではなく、別学という学校環境も含めて選んでいる可能性が高い。
 という話は昨日も書いた。
 その意味で、10月時点ですでに志望の純度が高いのだ。
 だから動きにくい。
 浦和の指数がほぼ100で推移するのは、まさにその表れと言っていいだろう。

◆一女は「指数が高いから安心」ではない
 ここで浦和一女だけは、少し別の見方が必要になる。
 7年間平均108.9。
 しかも7年間すべて100超。
 これは一見すると、非常に強い数字に見える。
 たしかに最終段階で希望者が増えているのだから、悪い話ではない。

 しかし募集マーケティングの立場から見ると、別の課題が見える。
 重要なのは指数を110や120に上げることではない。
 むしろ逆である。

 10月1日時点の希望者実人数を増やし、その人数をできるだけ最終出願まで維持する。
 こちらの方が強い募集構造である。
 たとえば、10月希望者400人、最終出願者440人なら指数は110。
 一方、10月希望者470人、最終出願者450人なら指数は96である。
 指数だけ見れば110から96へ下がった。
 しかし、募集という観点では後者の方が強い。早い段階で多くの支持を獲得し、最終出願者も増えているからだ。
 つまり浦和一女の課題は、志望推移指数を上げることではなく、10月1日の分母を大きくすることにある。

◆まだ「女子校を知らない層」はいる
 そこで問題になるのが、誰を新たに取り込むかである。
 私は、中学受験をしなかった女子の中に、まだ女子校という選択肢の良さに気づいていない層が相当数残っているのではないかと考えている。

 都内の難関私立女子校には、中高一貫化が進み、高校から入れない学校も多い。
 極端に言えば、難関私立女子校を目指すなら、中学受験をするのがもっとも確実という状況になりつつある。
 だが、中学受験をしなかった女子の中にも、女子校に向いている生徒、女子校で大きく伸びる生徒は当然いる。
 問題は、その本人がまだそれに気づいていないことだ。
 中学校までずっと共学で過ごしていれば、女子校の学校生活は未知の世界である。
 「女子校は嫌だ」と判断したのではなく、そもそも「女子校を選ぶ」という発想を持ったことがない。
 そういう層はまだいるはずだ。

◆女子校志望者を集めるのではなく、育てる
 浦和一女の可能性はここにある。  
 すでに女子校を希望している生徒を集めるだけでは、市場は大きく広がらない。

 必要なのは、「女子校を志望していない生徒に、女子校の良さを知ってもらう」ことである。
 中3になってからでは遅い。
 中1、中2、場合によっては小学生の段階から、女子だけだからこそ挑戦しやすいこと。
女子だけだからこそリーダーシップを発揮しやすいこと。共学とは違う人間関係や学校文化があること。そうしたものを、説明ではなく実際の生徒の姿を通して見せる。
 そして、「女子校も悪くない」「むしろ自分には合っているかもしれない」と思ってもらう。ここまで行けば、その生徒は将来の浦和一女志望者になり得る。

 これは「女子校志望者を集める広報」ではない。
 女子校志望者を育てる広報である。

◆最後に選ばれる学校から、早くから選ばれる学校へ
 浦和一女は、最終段階では強い。
 毎年、10月より最終出願者の方が多い。
 だからこそ次の課題は、「最後に選ばれる学校」から、「早くから選ばれている学校」へ進むことではないか。
 そのためには、中3だけを見ていては足りない。
 中1、中2、さらにその下の世代にまで視線を広げる必要がある。
 幸い、同校の説明会日程を見ると、中学1・2年生向けや小学生向けイベントもしっかり計画されている。その成果は必ず現れるはずだ。

 「浦和一女 学校説明会・入試情報」(浦和一女ホームページ) 

 私が、各校生徒募集担当の先生方に伝えたいのは、
 「いつ受験生と出会うべきか」
 「いつ学校の魅力を伝えるべきか」
 「そして、まだその学校の良さを知らない層をどう育てるか」
 を、共に考えましょうということだ。