昨日は花咲徳栄高校の卒業式に出席した。
生徒を送り込んでくれた塾にも案内を出しているらしく、何人かの塾長先生も出席していた。
さて、式典終了後。
ちょっとした懇親の場があった。
目の前に武蔵野銀行執行役員の方がいらしたので、とりあえずご挨拶。
すると、「当行相談役とご面識はありますか」とのお尋ね。
あるわけねえだろう。
レベルが違い過ぎるんだよ。
ちょっと前まで代表取締役だった大物だ。
埼玉県経済界で名前を知らない人はいないと思うぞ。
でも、せっかくだから名刺交換だけはしておこう。
ということで、来賓の筆頭として出席されていた前武蔵野銀行代表取締役(つまり社長。銀行だから頭取か)の加藤喜久雄氏にご挨拶。
この方。高卒で銀行トップまで昇りつめた、いわば立志伝中の人。
出身校は大宮商業。
年齢は私より5歳ほど上だが、その世代だと高卒たたき上げで頂点をきわめた人が結構いたものだ。
今は学歴重視だから、大卒か院卒じゃないとたぶん無理だろう。(自ら起業すれば別だが)
と、ここまではどうでもいい長い前置きだ。
◆専門高校の大学進学率
今日の調査は、専門高校からの大学進学である。
昨今は、専門高校からの大学進学もかなり増えているようだ。
そこで、例によってデータを見てみよう。
専門高校、専門学科にはさまざまなジャンルがあるが、今回取り上げるのは農業・工業・商業・家庭といった伝統的な専門高校である。
理数科や外国語科が進学系専門学科とすれば、職業系専門学科(高校)と言えるだろう。
以下、卒業生に対する大学進学者の割合だ。
数値は令和5年5月に埼玉新聞社が行った調査による。
つまり、ちょうど1年前の卒業生だが、傾向を確認するには十分だろう。
【農業系】
杉戸農業 35/228(15.4%)
熊谷農業 37/245(15.1%)
【工業系】
春日部工業45/227(19.8%)
川越工業 51/264(19.3%)
大宮工業 44/240(18.3%)
久喜工業 38/219(17.4%)
熊谷工業 36/227(15.9%)
三郷工業技術24/204(11.8%)
狭山工業 17/166(10.2%)
川口工業 13/204(6.4%)
【商業系】
狭山経済 78/219(35.6%)
浦和商業 68/268(25.4%)
深谷商業 68/271(25.1%)
熊谷商業 35/183(19.1%)
所沢商業 30/190(15.8%)
岩槻商業 18/143(12.6%)
大宮商業 22/210(10.5%)
【その他】
新座総合技術60/215(27.9%)
越谷総合技術45/194(23.2%)
いずみ 46/226(20.4%)
秩父農工科学 24/226(10.6%)
羽生実業 6/110(5.5%)
新座総合と越谷総合は工業・商業・家庭、いずみは農業・工業、秩父農工科学は農業・工業・家庭、羽生実業は農業・商業とそれぞれ複数系統にまたがっている。
上に示したのは4年制大学だけだが、これに短大・専門学校を加えると、就職者よりも進学者の割合の方が多い学校もある。
熊谷農業・杉戸農業・浦和商業・熊谷商業・狭山経済・深谷商業・いずみ・越谷総合技術・新座総合技術は、進学者の割合の方が多い。
川越工業・所沢商業も僅かだが進学者の割合の方が多い。
今回取り上げた22校中、およそ半分の11校で、広い意味での進学者が就職者を上回っているのであるから、もはや「職業系専門高校イコール就職」の時代ではないと言っていいだろう。
それが良いことなのか悪いことなのかは性急に判断は下せないが、そのような現実があるということだ。
◆大学進学への道は閉ざされていない
シンプルに大学進学だけを考えれば、普通科にアドバンテージがあるのは明らかである。
教育課程がそのように出来ている。
専門高校(学科)からの大学進学となると、入試に必要な科目を授業で学ぶことが難しく、指定校推薦などに頼らざるを得ない。つまり、選択肢が限られる。
ただ、大学入試のあり方が急速に変化しており、学力試験中心の一般選抜から、推薦系選抜へという流れも見られるので、以前に比べれば選択肢は広がっているだろう。
大学進学とはっきり決めて入るのなら普通科だが、中には高校のその先を明確に描けない中学生もいるだろう。
そういう子たちには、専門高校(学科)からも、ある程度の制約付きではあるが大学進学への道も開かれているのだというメッセージを伝えてあげるべきだろう。
技術と資格で武装して、探究をきわめれば、面白い将来が開けるかもしれない。
一方、高校側から見た場合、かつてのように就職オンリーの指導では済まなくなっており、それはそれで大変なことだ。
◆進路についての情報発信を
この二日間、普通科進学校がその実績をどのように見せているかを調べてきたが、今回、専門高校についてもざっと調べてみた。
残念なことに、ホームページに「進路」「進路指導」といった独立したメニューが存在しない学校もいくつか見られた。
就職であれ進学であれ、進路は重要情報なのであるから、ぜひ検討していただきたい。
大宮工業は「全日制進路だより」から入るのだが、これが分かりにくい。ページにたどり着けさえすれば、大学進学も含めかなり詳細なデータが見られるのに残念だ。
川越工業は「進路指導より」というメニューがあるので、ここから「進路実績」が見られる。ここもかなり詳しい。
春日部工業もズバリ「進路指導」というメニューがある。
深谷商業は「進路・資格」というメニューがあり、そこが入り口となる。「広告としての見せ方」は良いが、「データとしての見せ方」については、もう少し詳しくていいだろう。
普通科進学校並みに「進路実績」というメニューを設置しているのが浦和商業だ。
堂々とメニューに謳っているだけあって、「広告としての見せ方」も「データとしての見せ方」も群を抜いている。
ここまで作り込むのは容易ではないと思うが、専門高校の皆さん、ぜひこの水準をを目指していただきたい。
冒頭のアイキャッチ画像の意味がお分かりにならない方は、こちらに答えが。
2024-03-11 at 22:23
浦和商業の説明会に行ったときに、こんなにも大学・短大進学者がいるんだと驚いた記憶があります。
個人塾である当塾に来られる生徒・保護者のニーズは多様です。全員が大学進学を望んでいるわけではないですし、学進学か就職かを決めかねている生徒たちもいます。
そういった人たちから見ると、進学も就職も両方の可能性にこたえられる専門学科は、魅力的に映るのではないかなと思います。