毎年この時期、埼玉県内の専門高校を訪ねている。
 6月に「よみうり進学メディア」で専門高校特集があり、7月に埼玉新聞受験特集でも専門高校を取り上げる。
 両方の編集に関わっているので計6~7校を訪問する。

 今日の訪問校はいずみ高校である。
 前身は「与野農工」で、平成11年(1999)、全国初の生物系・環境系総合高校として生まれ変わった。

 さて、中学生向け紹介記事は別途書くとして、ここからは主に塾の先生方はじめ教育関係者を念頭においた記述となる。
 おそらく実際に訪れたことのある人は少ないと思うからだ。

◆大宮駅西口から一番近い県立学校
 駅からのアクセスについて、学校側はこのように謳っている。
 大宮駅西口からバス利用となると、大宮南高校・大宮光陵高校・大宮武蔵野高校などが思い浮かぶが、確かにこれらに比べ断然近い。
 ちなみに大宮南は私のかつての勤務校の一つであるが歩いたことはないし、そもそも歩いてみようと思ったこともない。
 パンフ等には徒歩23分とあり、実際に歩く生徒も多いとのことである。

◆意外に狭い農場
 同校の前身は与野農工高校であるから既存の学科分類に従えば「農業+工業」の学校ということになる。
 6学科あるが、うち4学科が農業科、2学科が工業科である。

 農業高校と言えば、広大な水田、畑などをイメージする人も多いだろう。
 実際、熊谷農業高校や杉戸農業高校や川越総合高校(旧川越農業)などは広大な農場を有している。
 以前、熊谷農業に取材に行ったときは一番遠い水田まで行くのを断念したほどだ。

 背景に映っているのは首都高さいたま新都心線のループ橋で、下を走るのは新大宮バイパス。
 
 農場が思ったほど広くないのは、一つには市街地にある都市型農業高校だからだろう。
 それともう一つは、この学校に集う生徒たちの興味関心の方向性が、他の農業高校生とはやや異なったところにあるからだろう。そのことは後述する。

◆おしゃれな中庭
 たくさんの実習棟に囲まれた中庭がおしゃれである。

 映画やドラマの撮影にも使われるという。
 学業そのものとは直接関係しないが、土と油のイメージとはかけ離れたこうした空間が学校生活に彩りを添える。

◆先生、何人いるの
 小林幹弥校長先生の案内で多くの授業を見て回った。
 見学したのが実験・実習の授業というせいもあるが、一つのクラス(授業)を複数の先生が担当していた。
 座学の普通教科はそうはなっていないと思うが、これは羨ましい。
 

 写真には4人の先生が映っているが、実際はもう一人いたので計5人。
 校長先生は、「とにかく先生の確保が大変なんですよ」と仰っていたが、それはそうだろう。

 ※公開後追記
 書くのを忘れたが、博士号を持った先生が3人か4人いるという話を聞いた。これも凄い。

◆小型「さかなクン」
 校長先生曰く「本校にはマニアックの生徒が多いです。むろんいい意味で」。
 興味関心を持ったことはとことん調べる。
 なぜそんなことまで知っているのかと先生方が驚くこともしばしば。

 たとえばコメや野菜を栽培するにしても、収穫してそれを販売するということよりも、葉についた虫とか土壌とか水質とか、どちらかというとそちらに興味が向いてしまう生徒が多い。
 だから実験は大好き。
 再び校長先生曰く「小型の『さかなクン』をイメージしてもらうといいかもしれません」。
 なるほど、分かるような気がする。

 探究心旺盛なかれらは、入学後、進路を大学などに定めることも多く、「生物サイエンス科」は80%(大学55%)が進学、「環境サイエンス科」は70%(大学30%)が進学となっている。

◆くくり募集
 入試関係の話を少ししておくと、同校は唯一「くくり募集」という方法を採用している。
 学科は6学科あるが、それらを「生物系」「環境系」という二つの大きなくくりで募集し、学科選択は入学してから行う。
 
 二つの「系」は、2年次から次のように分かれる。
 【生物系】
  生物生産科
  生物サイエンス科
  生物資源化学科
 【環境系】
  環境デザイン科
  環境サイエンス科
  環境建設科

 生徒はそれぞれ3つのうちいずれかの「科」を選ぶが、各科40人定員であるため第一志望の科に進めないこともあるようだ。
 学ぶ内容や自身の興味関心、適性を見極めてから選べるのがこのシステムのメリットだが、希望がかなわない場合もあることは知っておいたほうがいい。
 ただ、「科」ごとの専門科目のほかに、「系」や「科」を越えて自由に選べる「総合選択科目」(2・3年で計22単位)も用意されているので、これにより進路や興味に応じた学びが実現できる。   
 近年の人気は、「生物系」では「生物サイエンス科」、「環境系」では「環境サイエンス科」ということだ。

◆いずみ高校にお願い
 1.専門学科は内容が分かりにくいので、HPだけでなくSNS(Instagram)でも発信してください
 2.説明会が夏休みに2回、9月に1回と前半重視になっているのも募集が安定している一因だと思いますが、来年は1学期にも何かイベントを企画してみてください。
 3.学校説明会には、塾や中学校の先生方も参加できるようにしてください。
 4.HPに進路実績の掲載がないのでぜひ加えてください。
 以上を要望してきた。