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東京都では、保護者らによる教員への過度なクレーム対策の検討が進められているという記事。
保護者カスハラ、東京都対策検討 教員負担重く、条例契機(共同通信 10月5日)
東京都は今年(2025年4月)、全国初となるカスタマーハラスメント(カスハラ)防止条例を施行した。
地域限定かつ罰則のない条例なので効果のほどはさほど期待できない気がするが、多少の抑止効果はあるかもしれない。
この条例を契機として、教育現場における保護者カスハラについても何らかの対策を講じようというわけである。
サービス業に限らず、教育現場でも保護者からの過度なクレームや理不尽な要求が教員を追い詰める事例が後を絶たない。
本当に今の先生方は大変だと思う。
教員希望者の減少はこんなところにも原因があるのではないか。
個人的な話をすれば、私が現役教員だった3、40年前は、こうした問題はなかった。
そもそもカスタマーハラスメントはおろか、セクシャルハラスメントもパワーハラスメントも、言葉自体なかった。
保護者対応についての研修なども受けた覚えがない。
むろん保護者からのクレームがまったくなかったわけではないが、それによって教員が心を病んでしまったという話は聞いたことがない。
都教育委員会が実施したアンケートでは、22%の教職員が保護者から暴言や脅迫、長時間の拘束などの被害を受けたと回答しているそうだ。
影響として最も多かったのは時間外労働の増加だという。
何とか時間外労働を減らそうじゃないかという時代に、クレーム対応で時間を奪われたら、仕事への意欲も低下しようというものだ。
もちろん、人によっては、あるいは場合によっては心身の不調も招く。
教育の現場が、いつしか「クレーム対応の最前線」になってしまっている。
しかし、クレーム対応を教員個人の努力や忍耐で乗り切ろうという時代はそろそろ終わらせなければならない。
学校教育において保護者との連携は不可欠だが、教育の本質は子どもの成長を支える営みであり、教員はその専門職である。
保護者の不安や不満が、過度な要求や攻撃的な言動に変わるとき、教育の質そのものが脅かされる。
東京都の条例は、暴言や脅迫、過度な要求を「著しい迷惑行為」と定義し、事業者が対応方針を事前に示すことを推奨している。
教育現場でも、学校が保護者に向けて対応方針を明示することで、未然防止につながる可能性がある。
すでに一部自治体では、教員を守るマニュアルの策定が進んでいると聞く。
重要なのは、教員が孤立しないこと、させないことである。
学校や教育委員会、自治体が組織として教員を支える仕組みを整えることが急務だ。
教員が安心して働ける環境は、子どもたちの学びの質を高めることにつながる。

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