「ちゃん」付け呼びがセクハラになる。
 そう思わせるような新聞見出しを見つけた(2、3日前だ)。

 概要。
●佐川急便の営業所に勤めていた40代女性は、同僚の男性からセクハラ被害を受けたとして約550万円の賠償を求め、2023年に東京地裁に提訴した。
●判決によると、男性は職場で女性を日常的に「ちゃん」付けで呼び、「かわいい」「下着が見えてしまう」「体形いいよね」などと話しかけていたという。
●女性は、うつ病などを発症して退職した。
●東京地裁は23日の判決で、「ちゃん」付けについて「一般的には幼い子供に対して用いられ、成人に対して使うのは交際相手などの親密な関係にある場合が多く、業務上で用いる必要性は見いだしがたい」と、「ちゃん」付けは不快感を与えるものだったとして、一連の発言を含めてセクハラに当たると認定し、男性に22万円の賠償を命じた。
●女性は佐川急便も提訴していたが、会社が解決金70万円を支払うなどの内容で2025年2月、和解が成立している。
●厚生労働省の資料では、職場での「ちゃん」付けはセクハラに当たるケースもあると例示されている。

 判決文を詳しく読んだわけではないが、どうやら、男性はセクハラ発言を繰り返していたようだ。その中に混じって、「ちゃん付け呼び」があった。
 女性は「ちゃん付け呼び」を特に問題にしたわけではなかった。
 たぶん、賠償金22万円は、「かわいい」「下着が見えてしまう」「体形いいよね」がそれぞれ7万円で、「ちゃん付け」は1万円がいいところだと思う。
 しかし、新聞記事としては「ちゃん付け呼び」がセクハラ認定とした方が面白い。
 面白い証拠に、こうしてブログで取り上げているアホがいる。
 
 仕事上、中高生の意見を収集することがあるが、生徒たちは自身の呼ばれ方について、「呼び捨てはやめてくれ」とはあまり言わないが、「あだ名で呼ばないでくれ」「下の名前で呼ばないでくれ」は結構多い。特に、あまり好ましく思っていない先生から下の名前で「〇〇ちゃん」などと呼ばれると、「ぞっとする」「寒気がする」そうである。
 
 男の子には「くん」、女の子には「さん」で育ってきたわれわれ昭和世代は、いまだに性別に関わりなく「さん」と呼ぶことに抵抗感が強い。
 新聞記事を書く時は「さん」で統一するが、それは単に活字を打つだけだからどうということはない。また、インタビューなどもその場だけのことなので、男子中学生だろうが男子高校生だろうが、「さん付け」で困らない。
 だが、先生と生徒という関係の中で自然にできるかというとちょっと自信がない。そもそもジェンダーなんて言葉、自分の教員時代にはなかったし。

 別に児童や生徒をどう呼ぶかが法や規則で決められているわけではないのだが、ある意味、法や規則よりも強い社会的圧力の下で心ならずも「さん付け」呼びをせざる得ない年配教員の皆さんには同情を禁じ得ない。
 間もなく、教室内で「男」、「女」という単語を使ってはいけない時代がやってくるだろう。いや待て、すでに来てるか。